研究紹介 > トピックス > プレスリリース > プレスリリース 2016年 > ニホンジカ(シカ)とカモシカの糞を識別する手法を開発 ―“ニホンジカ・カモシカ識別キット”を製品化―
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2016年9月7日
ポイント
国立研究開発法人森林総合研究所(以下「森林総研」という)は、糞の表面に付着しているDNAを検出することによって、ニホンジカ(シカ)とカモシカの糞を識別する手法を開発しました。この識別法では、一般的なDNA検査に必要な専門的知識や技術を一切必要としません。シカとカモシカが混在する地域においてシカの捕獲計画等を立てる際に有用です。本識別法に使用する試薬は “ニホンジカ・カモシカ識別キット”として(株)ニッポンジーンから2016年9月2日に発売されました(写真1)。
近年、日本ではシカ(写真2)の個体数が激増し、農林業被害の拡大、自然植生の損失、自動車や電車との衝突事故の多発などの問題が深刻化しています。目視による調査が困難なことから、シカでは糞を用いて分布や生息密度を調査します。ところが、シカの糞とカモシカの糞は見た目では区別がつかないため、東北地方のようにシカとともにカモシカが多く生息している地域では、両者を分けて生息状況を把握することができず、シカ対策を進める上で大きな障害となっていました。
森林総研が開発した技術は、糞の表面を爪楊枝の先端で軽くこすり、破片に付着したDNAを溶かしだし、LAMP法*1により増幅し、2種類の検査液の色の変化によってシカの糞かカモシカの糞かを識別するというものです(図1;下記論文参照)。今回、(株)ニッポンジーンから発売された“ニホンジカ・カモシカ識別キット”では、森林総研が開発したこの技術が活用されています。検査にかかる時間はわずか75分(DNA抽出15分+LAMP反応60分)、特別な装置は必要なく、検査液を保温するだけです。識別に専門的な知識や難しい技術も一切必要ありません。本キットは、2016年9月2日から受注生産を開始しています(http://nippongene.com/kensa/products/lamp-kit/sika/sika-kamosika.html)。
シカとカモシカが混在している地域でも、シカの生息状況を正確に把握できるようになることから、シカの捕獲計画等を立てる際に役に立ちます。さらに、国の特別天然記念物でもあるカモシカの生息調査にも利用することができます。
お問い合わせ先 |
研究推進責任者:森林総合研究所 研究ディレクター 小泉 透 研究担当者:森林総合研究所 東北支所 生物被害研究グループ 主任研究員 相川 拓也 広報担当者:森林総合研究所 広報普及科 広報係 Tel:029-829-8372 E-mail:kouho@ffpri.affrc.go.jp |
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