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プレスリリース

2026年4月7日

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所

日本の森林の「根」の分布を初めて全国規模で明らかにしました
気候変動時代の森林の成長の将来予測に貢献

ポイント

  • 日本全国の森林を対象に、樹木の根の分布を初めて定量的に明らかにしました。
  • 直径2mm以下の細い根から20mm以上の太い根まで、それぞれの深さや密度の特徴を明らかにしました。
  • 本成果はモデルによる森林の成長量の予測精度の向上につながる知見です。

概要

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、日本全国の森林を対象に、樹木の根の分布を示す「根交差密度*1」を初めて全国規模で明らかにしました。本研究は、全国829地点の森林土壌の調査記録*2を用い、細い根から太い根までのさまざまなサイズの根を対象に解析したものです。その結果、土から水や栄養を吸収する細い根(直径2mm以下)と木を支え、同時に水や養分を輸送する中サイズの根(直径2mmより大きく、20mm未満)が8割以上の地点で観察され、それぞれ平均で地表から65cm、49cmの深さまで分布すること、また樹木の骨格をなす、より太い根(直径20mm以上)の出現は2割程度の地点に留まることがわかりました。さらに、根が出現する頻度は年平均気温が高い地域で高く、根の密度は土壌の地表からの深さによって制約されること、人工林では天然林に比べ、上記の気温と深さの影響が弱い傾向などが確認されました。これらの知見は、森林の成長を予測するモデル*3でこれまで簡略化してきた「根の深さ」の設定を見直す科学的根拠となり、気候変動下の森林の成長量の予測精度の向上に貢献します。さらに、強風による根返りなどのリスクを広域的に評価する際の基盤となる知見を提供するとともに、将来的には樹木根の重要な働きである斜面の安定にも配慮した森林管理技術の開発につながる成果です。
本研究成果は、2026年1月21日にForest Ecology and Managementでオンライン公開されました。

背景

森林は炭素吸収や水源涵(かん)養、土砂災害の防止など、多様な生態系サービスを支えています。その中でも、地上からは見えない「根」は、炭素・水・養分循環の基盤となる重要な存在です。しかし、これまで日本全国を対象とした根の観測データは存在せず、森林の成長を予測するモデルでは、根の深さや量が単純な仮定に基づいて設定されてきました。そのため気候変動に加え、一部の針葉樹人工林の針広混交林化や広葉樹林化など、将来的な人工林の質的な変化の可能性も考えられる中で、森林の根の実態を全国規模で把握することが、将来予測の不確実性を減らすための鍵として必要とされていました。

内容

本研究では、全国規模の現地調査でこれまで得られた土壌の調査記録を用いて、土壌の断面(土壌を垂直に切断した面)に現れる根の本数を示す「根交差密度」を解析しました(図1)。これまで根交差密度は土壌調査ではその場所の根の分布をおおまかに把握するための指標として利用されていましたが、全国規模で解析された例はありませんでした。今回の解析の結果、細い根(直径2mm以下)と中サイズの根(直径2mmより大きく20mm未満)は全国の8割以上の森林で確認され、それぞれ平均すると地表から65cm、49cmの深さまで分布していました(図2)。一方、太い根(直径20mm以上)の出現頻度は2割程度と低く、分布深度も浅くなる傾向がありました。また、年平均気温が高い地域ほど根が出現しやすい一方、土壌が深い場所ほど根の密度が低くなることが分かりました。さらに、森林タイプ別にみると人工林では天然林に比べ、根の分布に対する上記の気温や深さの影響が小さいことが示され、人工林と天然林を構成する樹種の違いが地下の構造にも影響することが示唆されました。

左:森林調査区の図、右:土壌を垂直に切断した断面図
図1:根交差密度の調べ方
全国に配置されている森林調査区(左図)の外側で、幅50cm、深さ1m程度までの土壌を掘削し、垂直の切断面(土壌断面)に出現する根の本数をカウントしました(右側)。その際、森林調査区と同様の植生や地形条件の地点を選定しました。また限られた時間で効率的に調査するため、なし(0本)、まれ(1-20本)、あり(20-50本)といったカテゴリーで記録しました。Toriyama et al. 2026の論文の図をクリエイティブ・コモンズ(CC BY 4.0)により改変して示しています。

 

左:根が分布する地表からの深さを示した全国マップ。右:スギ、ヒノキ、マツ類、ナラ、ブナ、その他の根が分布する地表からの深さを示したグラフ。
図2:中サイズ(2-20mm)の根が分布する深さ
結果の例として、中サイズの根が分布する深さの全国マップ(左図)と主要樹種別の箱ひげ図(右図)を示しています。主要樹種別でみると、スギの根が比較的深いことがわかりました。Toriyama et al. 2026の論文の図をクリエイティブ・コモンズ(CC BY 4.0)により改変して示しています。

今後の展開

本研究成果は、森林の成長モデルにおける根の深さの設定を改善するものです。これまでの研究成果では、土壌が強く乾燥する年(=土壌中の水分が少ない年)の森林成長量の予測精度が低いことが課題でした。その原因として、細い根が分布する深さ(=樹木が水を吸える深さ)の設定が過大である可能性がありましたが、これを裏付ける観測データはありませんでした。しかし本研究により、細い根は土壌の厚さ*4よりも1~2割程度浅い範囲までしか分布していないことが分かりました。この知見を取り入れることで、樹木が水を吸える範囲を実態により近い形でモデルに組み込むことができるため、乾燥する年の森林成長量の予測精度の向上が期待されます。また、中サイズ以上の根の全国データは、強風による根返り(風倒)などのリスクを広域評価する際の基盤となります。ただし本研究では、森林土壌を縦に切断したため、樹木根のうち横に伸びる水平根の評価が主体であり、縦に伸びる垂直根の評価は不十分であることに注意が必要です。今後は、斜面の傾斜や土壌条件と樹木根の発達との関係の解明を進めていきます。これにより、森林の成長だけでなく、樹木根が土壌をつなぎ止める働きによる斜面の安定にも配慮した森林管理技術の開発に貢献できると考えています。

論文

論文名:Root intersection densities in Japanese forests: Insights from a nationwide soil profile survey

著者名:Jumpei Toriyama, Yoshimi Sakai, Masahiro Inagaki, Kyotaro Noguchi, Akihiro Imaya

掲載誌:Forest Ecology and Management

DOI:10.1016/j.foreco.2026.123535

研究費:森林総合研究所交付金プロジェクト#202301「人工林伐採跡に再生した広葉樹林の防災・減災機能の評価」、文部科学省科学研究費基金24K01818「山地の表層炭素動態の包括的モデリングによる過去1万年の土壌炭素吸排出史の解明」

用語解説

*1根交差密度(Root Intersection Density:RID):土壌断面の一定面積あたりに観察される根の本数を示す指標。根の分布や密度を評価するために用いられます。(元に戻る

*2森林土壌の調査記録:林野庁の委託事業「森林吸収源インベントリ情報整備事業」第一期の一環として、2006~2010年度にかけて全国各地で森林土壌の現地調査が実施されました。この際、全国の都道府県の森林・林業研究機関から多くの調査協力を得て、森林総合研究所がとりまとめを行いました。(元に戻る

*3森林の成長を予測するモデル:例えば、森林の光合成や蓄積などのプロセスを計算式として組み込んだシミュレーションモデルなどがあります。
参考サイト:気候変動に伴うスギ人工林の生産力の変化を全国規模で予測(森林総合研究所研究紹介):https://www.ffpri.go.jp/research/saizensen/2021/20210322-03.html(元に戻る

*4土壌の厚さ:ここでは、A層およびB層と呼ばれる、有機物を比較的多く含み、鉱物の風化が進んだ土壌層の厚さを意味します。(元に戻る

 

お問い合わせ先

研究担当者:
森林総合研究所 立地環境研究領域 土壌資源研究室 主任研究員 鳥山淳平

広報担当者:
森林総合研究所 企画部広報普及科広報係
Tel: 029-829-8372
E-mail: kouho@ffpri.go.jp

 

 

 

 

 

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