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プレスリリース

2026年6月25日

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所

限られた人員・予算の中でも民有林林道を効率的・持続的に管理できる仕組みへ転換が必要
—全国調査から見えた課題と新たな管理の方向性を提示—

ポイント

  • 全国の民有林林道*1)の維持管理における課題を、体系的、定量的に明らかにしました。
  • 民有林林道の維持管理には、補修・維持管理予算や市町村担当職員の不足、路網データのデジタル化の遅れなど、複合的な課題が存在しています。
  • データ基盤の整備や維持管理作業の担い手をはじめ補完する体制の構築に対して、技術的支援・予算的支援が必要です。

概要

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、全国の市町村における林道担当者や維持管理に従事する関係者を対象とした調査を実施し、これまで十分に把握されてこなかった民有林林道の維持管理の現状と課題を明らかにしました。調査の結果、市町村における人員・予算の不足、沿線住民の減少や高齢化などに伴う担い手の不足、路網データのデジタル化の遅れといった課題が複合的に影響しており、民有林林道の維持管理水準の確保が難しくなっている実態が明らかとなりました。特に、位置情報などの基礎データの整備不足は、見回りや災害時の対応を困難にする要因となっています。これらの課題に対し、本研究では、GIS(地理情報システム)と連携したデータ整備による維持管理の効率化や補修・点検の優先順位付け、外部主体との連携による担い手確保が有効であり、それらに対する行政や民間事業者らによる技術的支援、予算的支援、先進事例の普及が必要であることを示しました。本研究は、今後の地域インフラ*2)維持のあり方、対応策の検討に重要な示唆を与えるものです。
なお、本研究成果は、「森林総合研究所令和7年版研究成果選集2025」にて一部公表しておりますが、より詳細な分析を加えて、2026年4月20日に日本森林学会誌でオンライン公開されました。

背景

民有林林道は、全国に約9万4千kmにわたって延びており、森林の活用や整備のための基幹道としてだけでなく、山村地域における生活道路、災害時の代替路としての役割(機能)を担っています。特に、国土面積の約半分を占める山村地域の交通アクセスの改善に民有林林道は役立ってきました。一方で、近年は気候変動による災害リスクの増大や地方自治体の財政・人員制約の強まりを背景に、インフラの維持管理の重要性が高まっています。しかし、民有林林道の維持管理の実施体制は、各林道の管理主体(市町村等)によってさまざまで、その実態や課題は、全国規模で十分に把握されていませんでした。
山村地域をはじめ人口減少が進むなかで、今後、民有林林道の維持管理がますます難しくなることが予想されます。その結果、民有林林道の有する機能が発揮できなくなることが懸念され、機能の継続的な発揮に向けた対応が求められています。その対応の検討にあたって、民有林林道が現在どのように維持管理されているのか、維持管理においてどのような課題が存在しているのかを明らかにする必要があります。

内容

本研究では、民有林林道の維持管理に関する現状と課題を明らかにするため、統計データなど各種データの分析に加え、市町村林道担当者へのアンケート調査(726自治体回答、回収率58.3%)と関係者へのインタビュー調査を実施しました。
その結果、民有林林道の維持管理は、「人手不足」、「予算不足」、「データ未整備」という3つの課題が重なり合って複合的に問題が生じていることが明らかになりました。
まず、人手不足の問題です。民有林林道は主に市町村が管理する責務を有していますが、市町村の林道担当者の多くは他業務と兼務しており、実質的に市町村の約9割が1名未満の体制となっていました。1人当たりに換算すると平均約193kmもの林道管理を担当しなければならない状況となっています(図1)。この距離は日常的な見回りや点検を行うには非常に広範であり、限られた人員で、広範囲に分散する民有林林道を十分に管理するのは難しい状況にあります。
ただし、実際の民有林林道の維持管理作業(除草や軽度な補修など)は、市町村担当職員だけでなく、林業事業体や沿線住民など、多様な主体によって支えられてきました。しかし、沿線の人口減少や高齢化の進行により、住民主体の維持管理の継続が難しくなってきています。実際に、「10年後には維持できなくなるのではないか」といった不安の声も多く聞かれました。

市町村の約9割が1名未満の体制で林道管理を担当している状況を示しているグラフ
図1. 市町村における林道業務担当の実人員数と民有林林道総延長の関係(n=303)
注:実人員数とは1人の市町村行政職員が担当する業務全体を1とし、林道への業務従事割合を乗じ足し合わせた数を示しています。

次に、補修・維持管理の予算不足の問題です。市町村担当者へのアンケートにおいて、「補修・維持管理予算の確保」が、市町村が直面している課題として最も多くの回答が得られました。森林面積が多く人口の少ない山村自治体だけでなく、都市近郊市町村や合併市町村(一部山村を含む市町村)も含めたいずれの市町村においても課題となっていました(図2)。したがって、限られた予算と人員のなかで、効率的かつ持続的な維持管理が求められているといえます。
さらに、林道の基礎データの不足も深刻です。開設から年月が経過し、管理主体でも起点終点など現地の正確な位置がわからなくなっている林道も存在するなど、路線情報が整備されていない事例もみられました。効率的な維持管理の実施には、従来紙で管理されてきた林道台帳*3)を電子化しGISと連携することが有効です。しかし、アンケートに回答した約4分の1の市町村(186自治体)において林道台帳は現在も紙で管理されており、GISと連携できていると回答したのは5%にとどまっていました。このようなデータ基盤の遅れは、効率化の妨げにもなっています。

民有林林道の維持管理に関する現状と課題を明らかにするため市町村林道担当者へのアンケート調査の結果を示すグラフ
図2.山村振興法による指定地域別の市町村林道担当者が感じる補修・維持管理における課題
注:山村振興法では、1950年2月1日時点で林野率75%以上かつ人口密度1.16人/ha未満の旧市町村を「振興山村」と指定しています。現在の市町村の範囲のすべてが振興山村である市町村を「全部山村」、市町村の一部が「振興山村」である市町村を「一部山村を含む市町村」としています。本研究では、山村振興法の「振興山村」の定義にまったく該当しない市町村を「都市型市町村」としています。

一方で、こうした課題に対応する先進的な取り組みも確認されました。たとえば、沿線住民による維持管理作業が困難になった路線を森林組合や建設業者、ボランティアなどが代替する事例やトレイルランナー・マウンテンバイカーなどが維持管理作業に参加する動き、都道府県が市町村の管理する林道データのデジタル化を支援する取り組みなどです。
これらの結果から、民有林林道の維持管理の持続性を確保するためには、データに基づく優先順位付けと地域や行政の枠を超えた支援体制の構築が重要であることが明らかになりました。

今後の展開

本研究で明らかになった課題は、民有林林道の維持管理のあり方を見直すための基礎情報となります。今後は、限られた人員・予算の中でも効率的・持続的に管理できる仕組みへの転換が求められます。効率的な維持管理を行うには、費用や便益の見える化や路線間での優先順位づけが有用ですが、費用や便益の見える化に必要な路線データの整備は不十分な現状にあります。市町村だけでは難しい路線データ整備の構築や支援体制の整備に関して、都道府県や国、民間事業者らによる技術的支援、予算的支援、先進事例の普及が必要です。
データ整備・更新に必要なコストの確保や、国・都道府県・市町村の役割分担の整理といった課題も残されていますが、今後は、本研究成果を踏まえ、関係者と国が制度面での検討と技術導入を一体的に進めていくことが期待されます。

論文

論文名:民有林林道の維持管理に関する課題と対応方向

著者名:笹田敬太郎・宗岡寛子・横田康裕・鹿又秀聡・都築伸行

掲載誌:日本森林学会誌

DOI:10.4005/jjfs.108.93

研究費:森林総合研究所交付金プロジェクト1「EBPM実現のための森林路網B/C評価ツールの開発と社会実装」、同交付金プロジェクト2「市町村森林行政に要する情報・知識の可視化と実行体制モデルの提示」、内閣府官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)「防災上管理優先度の高い路網判定技術の開発」

用語解説

*1)民有林林道
林道のうち、地方公共団体(都道府県や市町村)や森林組合等が民有林内に開設した林道のこと。民有林の所有者は、個人や企業のほか地方公共団体も含まれます。(元に戻る

*2)地域インフラ
地域社会の生活や経済活動を支えるための基盤となる施設やシステムのこと。(元に戻る

*3)林道台帳
林道の種類、構造、資産区分等林道の現況を明らかにし、適正な林道の管理に資することを目的とした台帳であり、現況一覧表、総括表、経過表、平面見取図、平面図及び林道位置図からなります。(元に戻る

 

お問い合わせ先

研究担当者:
森林総合研究所 九州支所 森林資源管理研究グループ 主任研究員 笹田敬太郎

広報担当者:
森林総合研究所 企画部広報普及科広報係
Tel: 029-829-8372
E-mail: kouho@ffpri.go.jp

 

 

 

 

 

 

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