研究紹介 > トピックス > プレスリリース > プレスリリース 2026年 > 航空レーザ計測で人工林の混み具合を高精度に評価 —間伐が必要な林分の抽出を支援する実用的手法を開発—
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2026年7月29日
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所
森林総合研究所九州支所と森林管理研究領域の研究グループは、航空レーザデータを用いて人工林の混み具合を効率的に評価し、間伐の優先順位付けを支援する新たな手法を開発しました。日本の民有人工林では、所有者の高齢化や林業従事者の減少などを背景として、十分な管理が行き届いていない林分が増加しています。本研究では、航空レーザデータから得られる森林の立体構造の情報を利用して人工林の混み具合を評価する方法を開発しました。茨城県および福岡県のスギ・ヒノキ人工林で検証した結果、間伐が必要な林分を効率的に抽出できることが確認されました。本手法は、自治体等による効率的な森林整備計画の策定支援への活用が期待されます。
なお、本研究成果は、農林水産省研究推進事業委託プロジェクト研究成果「管理優先度の高い民有人工林の抽出と管理のための手引書」にて一部公表していますが、より詳細な分析を加えて、2026年4月11日に Journal of Forest Research誌でオンライン公開されました。
日本の民有人工林は、国土保全や木材生産などの重要な役割を担っています。しかし近年は、木材価格の低迷、森林所有者の高齢化、担い手不足などを背景として、適切な管理が行われていない人工林が増加しています。こうした人工林では間伐の遅れによって樹木が過密状態となり、樹木の成長低下だけでなく、風害や土砂災害に対する危険性の増加も懸念されています。そのため、森林経営管理制度を推進する自治体では、限られた予算や人員の中で、どの林分から優先的に間伐を進めるべきかを客観的に判断する技術が求められています。
近年は航空レーザ計測によって広域の森林構造を高精度に把握できるようになりつつあります。しかし、これまでのレーザデータ解析では、収量比数(人工林の混み具合を評価する代表的な指標)の算出に必要な立木本数密度(1ヘクタール当たりの木の数)を、過密な林分で正確に把握することが困難でした。そこで研究グループは、航空レーザデータから別の指標で人工林の混み具合を正確に評価し、間伐の優先順位付けに活用できる新たな手法の開発に取り組みました。
1.森林の立体構造に着目した新たな評価方法
航空レーザデータから、平均樹高に対する樹木の葉が着いている長さの割合(平均樹冠長率: CR)と上空から見た時に樹冠が地面を覆っている割合(樹冠疎密度: CC)の両方を調べることで、森林がどれくらい混み合っているかを評価する手法を開発しました(図1)。
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| 図1平均樹冠長率CRと樹冠疎密度CC |
このCRとCCの情報を使えば、木の数を数えなくても、その林分が混みすぎているかどうかを判断できます。CRとCCは人工林の混み具合を評価する指標として以前から知られていますが、現地調査で広域に把握することは容易ではありません。研究グループが今回新たに開発した手法は、航空レーザデータからそれらを効率的にそして精度高く推定できるところが最も大きな特徴です。(手法の詳細についてはTakahashi and Tanaka (2026)をご覧ください)。
2.地域の人工林管理に適した森林区分図
人工林が過密状態になり、間伐が必要になったと判断する際のCRやCCの閾値には一般的な目安があります。まず一般的な閾値( CRの上限値は30%, 下限値は20%、CCは80%)を適用し、
管理状態が良好な林分(M:管理林分)
間伐が推奨される林分(C:過密林分)
著しく過密状態にある林分(O:超過密林分)
に区分したものが図2(Takahashi and Tanaka (2026) の Figure 9 を一部改変して作成(CC BY 4.0))になります。
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| 図2.CRとCCに一般的な閾値を適用した森林区分図の例 |
航空レーザデータから高精度に推定されたCRとCCの数値そのものはその地域の人工林の現状を表していますが、優先的に管理すべき林分を地域の実情(地域の施業可能量や森林の特性など)に応じてさらに絞り込むように閾値を調整したところ(例えばCRは変えず、CCを90%に変更)、図3のような森林区分図が作成されました。
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| 図3.地域の実情に応じて閾値を調整した場合の森林区分図の例 |
茨城県および福岡県のスギ・ヒノキ人工林でこのような閾値の調整を行った結果、本手法により航空レーザデータから地域の実情に応じた人工林の混み具合を適切に評価できることが現地踏査などで確認されました。このように閾値を調整して作成される森林区分図は、地域に適した人工林管理に活用できます。
近年、多くの自治体で航空レーザデータの整備が進んでいます。本研究で開発した手法は、さまざまな仕様の航空レーザデータに対応できる長所があり、また古い世代のセンサ*2で計測されたデータでも基本的には適用可能です。
本手法を活用することで、広大な民有人工林の中から間伐する必要がある林分を空から効率的に抽出できるようになり、自治体等が担う森林整備に役立つことが期待されます。
論文名:Enhancing thinning efficiency in closed-canopy conifer plantations using dynamic threshold-derived live crown ratio and canopy cover from airborne discrete-return LiDAR data
著者名:Tomoaki Takahashi, Shinya Tanaka
掲載誌:Journal of Forest Research
DOI:10.1080/13416979.2026.2656549
研究費:農林水産技術会議委託プロジェクト「管理優先度の高い森林の抽出と管理技術の開発[JP21453194]」、内閣府「研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)[R6-07]」
*1航空レーザデータ
小型の飛行機やヘリコプターに載せたレーザセンサを使って、広大な森林の立体構造を空から測る技術が航空レーザ計測と呼ばれ、その三次元データのことを指します。(元に戻る)
*2センサ
現在のセンサは1本の照射レーザから多くの反射データを取得できますが、古い世代のセンサでは最大で二つの反射データしか取得できませんでした。(元に戻る)
本研究の実施にあたり、茨城県林業技術センター、福岡県農林業総合試験場資源活用研究センター、茨城県常陸太田市および福岡県久留米市には、航空レーザデータや森林GISデータの提供ならびに研究・調査へのご協力をいただきました。
「管理優先度の高い森林の抽出と管理技術の開発」プロジェクトホームページ
https://www.ffpri.go.jp/labs/hmpforest_hp/index.html
管理優先度の高い民有人工林の抽出と管理のための手引書
https://www.ffpri.go.jp/pubs/chukiseika/documents/5th-chuukiseika37.pdf
これらの研究関連情報には、本手法の実装を自治体が発注する際の仕様書の見本も含まれています。

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