研究紹介 > トピックス > プレスリリース > プレスリリース 2026年 > 気候変動でスキー場はどのぐらい減るのか? ~気温4℃上昇で安定営業できるスキー場は全国で7か所に~
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2026年8月3日
北海道大学
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所
ポイント
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院及び観光学高等研究センターの吉沢 直講師と、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の勝山祐太研究員は、日本全国349か所のスキー場を対象に、気候変動が将来のスキー場営業に与える影響を分析しました。本研究では気候変動予測データに基づく積雪シミュレーションを行い、過去実験(1951-2011年)、2℃上昇実験(2030-2091年に相当)、4℃上昇実験(2050-2111年に相当)の条件下で、自然積雪のみを前提としたスキー場の営業可能性を評価しました。その結果、温暖化が進むにつれて、日本のスキー場の存続可能性は急速に低下することが明らかになりました。特に4℃上昇条件では、天然雪のみで安定的に全面営業できるスキー場は全国でわずか7か所、一部営業が可能なスキー場も26か所に限られると予測されました。一方、2℃上昇条件では、全面営業が可能なスキー場は53か所、一部営業が可能なスキー場は108か所と推定されました。特に北海道や長野県など、高緯度・高標高地域のスキー場では相対的に存続可能性が高く、今後、日本のスキー観光が一部地域へ集約していく可能性が示されました。
なお、本研究成果は、2026年8月1日(土曜日)公開の日本雪氷学会誌「雪氷」にオンライン掲載されました。

(a)過去実験(b)2℃上昇実験(c)4℃上昇実験における全部営業可能率と(d)過去実験(e)2℃上昇実験、(f)4℃上昇実験における一部営業可能率
スキー観光は雪を存立基盤としており、気候変動の影響を大きく受ける産業の一つです。近年、日本ではインバウンド観光の増加に伴い、パウダースノーを求める外国人スキーヤーも増加し、スキーリゾートは日本の観光政策上も重要な役割を担っています。しかし、日本のスキー場を対象に将来の気候変動による自然積雪条件の変化を評価した研究はこれまで限定的でした。本研究は日本全国349か所のスキー場を対象に、気候変動がスキー場の営業可能性に与える影響を明らかにしたものです。
本研究では気候変動予測データに基づく積雪シミュレーションを行い、各スキー場の積雪条件を推定しました。対象としたのは、スキーリフト・ゴンドラを有する日本全国349か所のスキー場です。過去実験(1951-2011年)、2℃上昇実験(2030-2091年に相当)、4℃上昇実験(2050-2111年に相当)を比較し、自然積雪のみで年間100日以上営業可能かどうかを基準に、全面営業可能性及び一部営業可能性を評価しました。なお、本研究では人工降雪機の利用は分析に含めておらず、まずは自然積雪条件に基づく評価を行っています。
1. 4℃上昇では、天然雪による安定営業はほぼ困難に
気候変動対策をほとんど行わないと到達するとされる4℃上昇条件では、天然雪のみで安定的に全面営業できるスキー場は全国で7か所に留まりました。一部営業が可能なスキー場も26か所に限られ、日本のスキー場経営に極めて大きな影響が及ぶ可能性が示されました。
2. 2℃上昇では、高緯度・高標高地域に存続可能性
パリ協定の基準に合わせ気候変動を抑えた2℃上昇条件では、4℃上昇条件に比べて影響は限定的であり、北海道や長野県の高標高地域を中心に、一定の営業可能性が残ることが示されました。この結果は温暖化の進行を2℃程度に抑えることが、日本のスキー観光の将来にとって重要であることを示しています。
3. 新雪日数も全国的に減少
過去実験では日本海側のスキー場、北海道札幌市の西側、奥羽山脈沿い、新潟・長野・群馬県境付近などで年間20日を超える新雪日数が確認されました。しかし、4℃上昇条件では、多くのスキー場で新雪日数が年間10日以下に減少すると予測されました。
本研究は、自然積雪条件に基づいて日本のスキー場の将来を評価したものです。今後は、人工降雪・造雪施設の導入可能性、スキー場ごとのコース配置、地域ごとの運営条件、国内外のスキーヤーの行動変化などを組み込んだ分析が必要です。また、将来に存続可能性が高い高緯度・高標高のスキー場では、需要集中による高価格化や混雑が生じる可能性があります。一方で、低標高・地方部のローカルスキー場が失われることで、地域住民や子どもたちがスキーに触れる機会が減少することも懸念されます。本研究は、単にどのスキー場が残るかを示すだけでなく、気候変動下で日本全体のスキー文化、地域観光、スポーツ参加機会をどのように守るのかという問題を提起しています。
本研究はヤマハスポーツ発動機スポーツ振興財団のスポーツチャレンジ助成の支援により実施したものです(気候モデルを用いた将来における日本全国のスキー場の生存可能性評価:研究代表者 吉沢 直)。
論文名:将来における日本全国のスキー場の存続可能性:自然積雪条件における気候変動影響評価の試み
著者名:吉沢 直1、2、勝山祐太3(1北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院、2北海道大学観光学高等研究センター、3森林総合研究所森林防災研究領域)
雑誌名:日本雪氷学会「雪氷」(雪氷学の専門誌)
DOI:10.5331/seppyo.88.4_295
公表日:2026年7月30日(木曜日)
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