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関東・中部低山帯における褐色森林土の化学的性質は岩石や火山灰などの母材の種類によって異なっていた。このことから,森林土壌の持つ機能を多面的に評価する際には母材が重要な要素となることが明らかになった。
渓流の行き止まりである,谷頭斜面での降雨流出特性を観測により明らかにした。さらに,主に地形因子をパラメーターに用いたモデル解析により流域全体の流れが再現できることを示した。また,乾期の谷頭斜面のように流出量の少ないときは,地形以外の因子に作用することが解った。
気候予測などに使われる大気モデルに対して森林の効果を適切に反映させることを目的とし,森林と大気の間の熱や水蒸気の交換過程を川越市の落葉広葉樹林でのタワーを用いた継続観測データをもとにモデル化した。森林資源の充実と林業における生産性の向上
大規模な雪崩災害は,短時間に多量の雪が降るドカ雪時に起こることが多い。そこで,時間毎に新たに積もった雪の深さを推定するシステムを開発し,これにより得られた諸量を用いてドカ雪時の雪崩予測を可能にした。
液体振とう培養して増殖させた細胞を,蛾の蛹に注射接種することにより,冬虫夏草の一種サナギタケ(Curdyceps militaris)のキノコを,季節によらず,短期間で形成させるための簡便な方法を開発した。
スタイナーネマクシダイはコガネムシ類幼虫に対して強い殺虫力を示す昆虫病原性線虫である。この線虫の液体培地による大量増殖法と増殖線虫の低温保存法を開発した。
針葉樹人工林における広葉樹の導入に通した施業法を検討するため,間伐と群状伐採に伴う林内光環境の変化を推定した結果,間伐では林内の明るさを維持することが困難で群状伐採の方が適していることが示された。
小笠原諸島に侵入した外来樹種アカギの繁殖を抑制し,在来樹種シマホルトノキを増殖することを目的として,生活史特性や生理特性を調べた。アカギの繁殖抑制のためには雌木の枯殺と稚樹の抜き取りが有効であり,シマホルトノキの増殖のためにはクマネズミの排除と植栽が有効であることが解った。
首都圏近郊の観光レクリェーション施設の分布について,森林管理面から見た重要度をもとに重み付けして集計した結果,高得点を得た集中地域が霞ヶ浦流域では75箇所あり,それらは6つのタイプに類型化できた。
木質系内装材料を,新たにパーティクルボードにリサイクルするための製造条件を検討した。加工エネルギーの少ない破砕エレメントのみを原料とすると強度が落ちるが,切削エレメントを混合することにより,JIS8タイプを満足するパーティクルボードが製造できた。
国産建築用材として代表的な樹種であるスギ材について,木材乾燥に関係する材質的な特徴や乾燥性を検討し,最も普及している蒸気加熱乾燥法に関して,特に背割り加工したスギ柱材の最適処理条件を明らかにした。
小笠原諸島に固有の絶滅危惧種オガサワラグワの繁殖動態を調べた。遺伝マーカーを使って,成木では,父島の73%,母島では48%が導入種シマグワとの雑種,弟島の1集団のみ純血,と判定した。また,母島の実生は全て雑種であった。
遺伝子銃による遺伝子導入の際有効な不定胚経由の樹体の再生系を数種の日本産針葉樹および,熱帯樹のマホガニーにおいて,世界で初めて開発した。
アロザイム分析を行った結果,北海道のコナラ集団では,隔離集団においても大集団と同等以上に遺伝的多様性が高いことが示された。また,葉形質の分析から,コナラの隔離集団にはミズナラ・カシワとの交雑によって生じた個体が大集団よりも多く含まれていることが示唆された。
全国での観測の結果から,森林域の降水は依然「酸性雨」であり,酸性原因物質のうち硝酸の割合が増加傾向にあること,樹木衰退原因の多くは風雪・病虫害や過密・被圧であり,土壌の酸性化は進んでいないことを示した。
スギ花粉症対策の一環として花粉予測の精度を向上するために,スギ林の花粉生産量を推定する簡便な方法を開発するとともに,花粉放出時期予測の基礎となる雄花の開花条件を明らかにした。
家畜排泄物を肥料化するための副資材としてウッドチップを用い,チップの分解促進のために土壌動物を導入すると,短期間に良質の堆肥が出来る。堆肥化手順を図示し,消臭効果や肥料としての有効性も確認した。
断片化した森林内に生えるシラカシとホオノキの遺伝子を解析し,シラカシの場合,椎樹の世代が持つ遺伝子の33%を,またホオノキの場合は57%を,調査林分外の個体から受け継いでいることを明らかにした。
里山ブナ林をとりまくランドスケープを構成する森林や農地などの分布と変容,および過去の土地利用と植物の種組成,多様性,林分構造との関係を明らかにし,今後の里山ブナ林の保全計画のあり方を示した。
高知県南西部にある市ノ又山国有林の約200年生の天然林と30年生のヒノキ人工林について,両者の土壌特性を比較し,天然林をヒノキ人工林にすることによって地力の低下が必ずしも生じるわけではないことを明らかにした。
シラカシ枝枯れ被害は,病原体探索の結果,一群の細菌が原因であり,シラカシ枝枯細菌病と命名した。本菌は細菌学的性質と宿主範囲から,Xanthomonas campestrisの新病原型であることが判った。
タイ西部の熱帯季節林では,タケが下層をおおうため森林は更新しにくいが,タケの枯死や野火が埴生変動の契機となった。植林は森林回復の手段として有効であるが,劣化した土壌は植林後直ぐには回復しない。天然林,二次林,草地では樹木による炭素蓄積は,ほとんど増加しないが,チーク植林地では炭素固定速度は大きかった。
タイに見られる典型的な熱帯林(山地常緑林,季節林,マングローブ林)を衛星リモートセンシングと地理情報システムを用いて,システマティックに調査し,その季節変動と経年変動の動態を明らかにした。
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