更新日:2012年7月18日

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軌条形ベースマシンの開発

林業機械研究領域 自動化技術チーム長 陣川 雅樹
  伐出機械研究室 山口 浩和
岐阜県林業課 大内 晃、波多野 隆美、伊佐治 彰祥
岐阜県森林科学研究所 古川 邦明
藤井電工(株)機工技術開発部 佐竹 利昭、蓬莱 圭司、上田 光男

背景と目的

地形が急な森林地帯では、林道や作業道の開設に多くの費用と林地の消失を伴うため、路網の整備を進めることがむずかしく、車両系林業機械の導入も進められていない。そのため、急傾斜地での森林作業は、人力に依存しており、作業効率の停滞や労働安全低下の原因ともなっている。また、林業労働者の高齢化や労働力の不足により、適正な森林の維持管理ができなくなってきており、間伐遅れの増大や森林機能の低下をおこすなど社会問題ともなっている。そこで、これらの問題を解決し、急傾斜地における森林作業の機械化を図るため、急傾斜地での走行性や安全性に優れ、かつ林地を保全でき、環境にも優しい軌条形ベースマシンの開発を行った。

成果

軌条形ベースマシンの設計にあたり、1)モノレールと同様にレール上を走行する、2)傾斜±45度の斜面を登降坂し、傾斜30度までの斜面で作業を行う、3)車両構成は動力台車と作業台車の2車両とする、4)作業機としてグラップルクレーンを搭載する、などの条件を設定し、開発を行った。

動力台車は、水冷4サイクルディーゼルエンジン(1642cc、36.8PS/3000rpm)を搭載し、走行用油圧ポンプと作業機用油圧ポンプの切り換えにより、車両走行と作業機の作動を行う(写真1)。また、安定した走行を得るため、動力台車2輪だけでなく作業台車にも駆動輪4輪をつけ、合計6輪の駆動輪により走行を行う構造とした。一方、レール上で作業を行い、車両後方に位置する別のモノレール運搬台車に木材を積み込むことを想定し、作業台車には最大リーチ8m(吊上荷重226kg)の全旋回形グラップルクレーンを搭載した(写真2)。設計上のグラップル到達範囲は中心より約6mである。また、クレーンセンターピラーを垂直に立てるため、クレーン角度を±35度の範囲で調整可能なチルト機構を搭載した(写真3)。さらに、車両・レールに加わる曲げ荷重および走行時の収納性を考慮して、リモコン操作によって動作する脚式アウトリガを作業台車の前後左右に4本装備した(写真4)。

開発した軌条形ベースマシンの車両性能を把握するため、走行試験および応力・荷重測定試験を実施した。その結果、登坂走行速度は傾斜40度で20m/min、0度で33m/minを実測した(図1)。台車各部に加わる応力は最大25.3kgf/mm2であり、許容応力の限界値付近まで応力が加わっていることが分かった。また、アウトリガの最大接地圧は1190kgであり、計算値より低い数値となった(図2)。これは4本のアウトリガの接地により、荷重分散が図られているためと考えられる。

本車両の設計開発によって、急傾斜地における積込作業の機械化が可能となった。今後、作業機を交換することによって、様々な森林作業に対応した軌条形林業機械の開発が期待できる。

なお、本研究は農林水産技術会議連携実用化研究「軌条形ベースマシンの開発と利用システムの構築」による。

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写真1 動力台車

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写真2 作業台車(グラップルクレーン)

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写真3 チルト機構

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写真4 アウトリガ

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図1 走行性能

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図2 アウトリガの接地圧

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