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更新日:2012年8月22日

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平成13年度 研究成果選集 2001

森林における生物多様性の保全に関する研究

落葉亜高木種アオダモの雄株と両性株の割合は交配様式で決まるのか

野球用バットの素材となるアオダモは、両性個体と雄個体が見られる特異な樹木であり、集団の交配様式と集団遺伝構造を調べた。その結果、両性個体は他家花粉と自家花粉の両方で種子を作るが、自家受粉由来の個体は死にやすいうえに、既往の理論では説明できない高い雄個体比をもっていることが判った。

森林の国土保全、水資源かん養、生活環境保全機能の高度発揮に関する研究

落葉広葉樹林における林床面CO2放出量の長期連続測定 —川越森林気象試験地—

森林生態系におけるCO2動態の解明に重要な林床面CO2放出量評価のため、落葉広葉樹林内において自動開閉型チャンバを用いた長期連続測定を行い、林床面CO2放出量と環境因子との関係を明らかにした。

濡れ雪の強度を測定する

湿雪雪崩の発生条件を解明するために、積雪のせん断強度、密度および含水率の測定を行った。その結果、積雪がある面に沿ってずれることに抵抗するせん断強度は、乾き密度のべき乗に比例して増加すること、ならびに体積含水率の増加と共に指数関数的に減少することが判った。

森林に対する生物被害、気象災害等の回避・防除技術に関する研究

森林火災が発生する危険度の評価には、落葉層の含水率推定が重要である

林内微気象データから、林床可燃物の含水率を予測するモデルを開発した。京都府南部の常緑・落葉樹混交林と落葉広葉樹林を対象にモデルの検証を行った結果、林相ごとに予測することが可能となった。

多様な公益的機能の総合発揮に関する研究

レーザー光を用いて空から森林の構造をとらえる

精細な計測が可能なヘリコプターからのレーザー計測により、スギ人工林における立木本数および各立木の樹高、広葉樹林における林冠の階層構造を把握する手法を開発した。

ランドモザイク解析により森林の分断度合を調べる

茨城県七会村ほか1地区の植生図を作成してGIS化し、森林の分断度指標を定量的に求めた。その結果、人為インパクトにより天然林や、人工林がどのように分断化されているかを定量的に評価することが可能となった。

広域デジタルマップで森林資源の移り変わりを見る

既存の統計資料や地形モデルを地理情報システム(GIS)上で統合的に取り扱うことにより、四国全島といった広域における森林資源の推移を視覚的に表現し、森林が地形条件や人口の移り変わりとともにどのように推移したかを明らかにした。

地球環境変動下における森林の保全・再生に関する研究

日本の森林炭素吸収量とその分布

最新の林業統計を利用して、日本の森林による炭素蓄積量および炭素吸収量の推定を行い、その分布図を作成した。

森の落ち葉はどのくらい炭素を貯めているか?

林業統計と地理情報システムを利用してわが国の森林で落ち葉等の堆積有機物がどのくらい炭素を蓄積しているか推定し、その分布様式を図化した。

地球温暖化がブナ林とスギ人工林に与える影響の評価

ブナ林の分布やスギ人工林の活力度に影響する気候要因を特定し、温暖化気候シナリオに基づいて、温暖化後の適地の変化を予測した。温暖化に対し脆弱であって、今後不適地となる可能性がある地域がそれぞれ特定できた。

効率的生産システムの構築に関する研究

軌条形ベースマシンの開発

急傾斜地での森林作業の機械化を図るため、傾斜±45度の斜面を登降坂し、傾斜30度までの斜面においてグラップルクレーン作業を行うことができるモノレール式の軌条形ベースマシンを開発した。

森林の新たな利用を推進し、山村振興に資する研究

スギ雄花の開花時期を予測する

「スギ花粉飛散予報」には雄花開花時期の予測が不可欠である。そこで、雄花の発育過程に基づいた「開花時期予測モデル」を開発した。過去の開花データを用いて検証した結果、このモデルはスギ雄花の開花時期を概ね良い精度で予測できることが確認された。

菌床栽培におけるダニ被害を回避する

ケナガコナダニがきのこ菌床栽培培地に害菌を運び込むことを確認した。ケナガコナダニやサジボウヒナダニなど害菌を伝搬するダニは、ジャガイモ・糖・寒天培地トラップでモニタリングすることが可能である。

循環型社会の構築に向けた木質資源の利用に関する研究
(木質資源の環境調和・循環利用技術の開発に関する研究)

セルロース系新材料構築のためのグルカン鎖配向の新コンセプト

結晶ではないが、グルカン鎖の良好な配向を有するセルロースの新しい分子集合構造を創製するとともに、構造形成のためには配向制御が重要であることを提案した。

キシロースを糖質原料としてバクテリア・セルロースが生産できる

バクテリア・セルロースは高付加価値の産業用素材であり、その糖質原料は廃糖蜜、デンプン粕などグルコースやフルクトースを構成糖とする糖質に限ると考えられていたが、低価格で大量に供給可能な木質系廃棄物も対象になり得ることが分かった。

循環型社会の構築に向けた木質資源の利用に関する研究
(安全・快適性の向上を目指した木質材料の加工・利用技術の開発に関する研究)

厚物構造用合板を利用した高耐震床の正しい設計法の開発と性能評価

厚物合板を利用する在来構法用床構造の設計法を開発した。実験の結果、耐震性、遮音性及び局部集中荷重に対する強度に優れていることを実証した。

生物機能の解明と新素材の開発に向けた研究

スギの遺伝子地図とその利用

多くの遺伝子の塩基配列を読みとり遺伝マーカーを作出し、スギの遺伝子地図を作製した。また開発した遺伝マーカーで全国のスギ天然林を調べたところ、日本海側と太平洋側のスギが遺伝的に分化している。

 

ホウ素によるペクチンの架橋が植物の成長に必須である

植物の必須元素であるホウ素は、細胞壁の中のペクチンを架橋している。ホウ素が欠乏するとペクチンの架橋が起こらないので、組織は脆くなるなど、ホウ素の生理学的役割を明らかにした。

森林・林業・木材産業政策の企画立案に資する研究

地域材による家造り運動の可能性

地域材による家造り運動は、国産材需要拡大策として可能性がある。この運動で消費される木材の量は限られているものの、需要拡大策に多様性を持たせ、小・零細規模の業者に適した方策であるという点で重要な取り組みである。

変わりつつある素材生産業

2000年世界農林業センサスおよび既存統計により全国動向を分析した結果、素材生産業者において規模の拡大、事業範囲の広域化、請負化の進展、高性能林業機械の普及、生産性向上の停滞等が明らかになった。

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