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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2008年2月 ヤノナミガタチビタマムシ、オオコクヌスト幼虫

ケヤキ樹皮下で越冬中のヤノナミガタチビタマムシ

ヤノナミガタチビタマムシTrachys yanoi Y. Kurosawaはコウチュウ目タマムシ科に属する昆虫である。ケヤキの害虫として著名で幼虫は潜葉虫として、成虫は食葉虫として、幼成虫ともにケヤキの葉を食害する。成虫の体長は2.6~4.2mmで卵形をしている。1年1化で成虫は冬期にケヤキの粗皮下で数個体から十数個体で集団越冬する。越冬成虫は新芽が活動する時期から新葉の時期、4月上~下旬に飛び出し、若葉を通常、葉1枚に成虫1個体で摂食する。成虫は5月上旬頃から交尾、産卵する。孵化幼虫は卵と葉の接着面から葉に潜入し、葉肉を食べる。幼虫の食害痕は初めは目立たないが、老熟幼虫期では葉が褐変し、発生が多いときには見苦しく、落葉する場合もある。蛹化は葉内で行い、羽化成虫は葉皮に穴をあけ、脱出する。脱出成虫は近くのケヤキの葉を摂食する。10月上~下旬にケヤキや近くの潜れる環境を探して、潜り込み越冬する。しかし、越冬成虫はケヤキの粗皮で陽の直接当たらない場所を探すのが一番よい。防除法としては越冬する性質を利用して、ケヤキの幹にこもや寒澪遮などを巻き付け、越冬成虫を大量に除去する方法が考えられている。分布は本州、四国、九州;朝鮮半島、中国である。近縁種としてナミガタチビタマムシTrachys griseofasciata E. Saundersがいるが食樹がムクノキ、エノキでケヤキで見られることもあるが、非常に希なので、ケヤキで見られるチビタマムシはヤノナミガタチビタマムシと思って大丈夫である。写真(右)は2007年1月3日、茨城県つくば市で撮影した。体長は3.5mmの雌成虫。

ヤノナミガタチビタマムシ
写真 :  ヤノナミガタチビタマムシ

アカマツ枯死木樹皮下のオオコクヌスト幼虫

オオコクヌストTrogossita japonica Reitterはコウチュウ目コクヌスト科に属する昆虫である。コクヌスト科はその名のとおり、貯蔵穀物を食害するグループがいることから名付けられた科であるが、このオオコクヌストは捕食性の昆虫の代表的な種である。オオコクヌストは幼虫、成虫ともに捕食者で、マツ類、モミなどの針葉樹の枯木樹皮下に生息し、カミキリムシ、ゾウムシ、キクイムシ類の幼虫、時には成虫も食べてしまう。成虫は樹皮上もよく歩行し、他の昆虫を捕食しているのをよく見かける。写真のオオコクヌストの幼虫は25mmで終齢幼虫である。写真上に見られるニセマツノシラホシゾウムシShirahoshizo rufescens (Roelofs) (コウチュウ目ゾウムシ科)の終齢幼虫が多数越冬しているアカマツ樹皮下に同時に見られた。餌に囲まれて越冬し、暖かくなると食べてしまうのであろう。ちなみにオオコクヌストはマツノマダラカミキリ幼虫の天敵としても知られている。成虫は体長12~19mm、黒色で平たい長方形とでもいえる形をしている。分布は北海道、本州、四国、九州;朝鮮半島である。写真(右)は2008年1月3日、茨城県つくば市の材線虫病で枯れたアカマツ樹皮下を撮影した。

オオコクヌスト幼虫
写真 : オオコクヌスト幼虫

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