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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2008年7月 アジサイの仲間

アジサイの仲間

 

梅雨時の鬱陶しい季節を代表する樹木といえばアジサイ。雨に濡れてひときわ鮮やかな青や薄紫は美しい。傘をさしてまで見に出かける気になるのも頷ける。一般的に園芸用として植えられるアジサイの母種はガクアジサイ(写真1)で、房総半島から伊豆半島にかけ、さらに伊豆諸島、小笠原諸島に自生する日本の固有種である。このガクアジサイが元になり、多くの園芸品種が作られている。アジサイは、こうした品種の中で、花序全体がほとんど装飾花(後述)となったものである(写真2)。日本に分布するアジサイの仲間(アジサイ属Hydrangea)には、この他、タマアジサイ、サワアジサイ、ヤハズアジサイなど10数種あるが、その形態は、低木(タマアジサイ)から小高木(ノリウツギ)、ツル植物(ツルアジサイ:写真3)まで多様である。こうしたアジサイの仲間にほぼ共通して見られるのが、ガクアジサイの花の形態に特徴的に見られる装飾花である。装飾花はガクが変化して出来たもので、通常、多数の小花(本当の花)が集合したまわりにあり、受粉のため訪花昆虫を誘引する目的で進化したものと考えられている。しかし、中にはコアジサイのように、この装飾花を持たないものもある(写真4)。アジサイ属植物は総じて、森林の最下層を生活の場とするものが多く、訪花昆虫を誘引するためには目立つ花を準備しなければならないが、彼らは、何故か本来の花びらを大きくする代わりに付属物であるガクを大きくする道を歩んできた。さらにこの装飾花の戦略は、梅雨時の雨の多い時期に開花するため有効に働いているとも言える。アジサイは、何故か水を連想させる。開花期が梅雨時に重なるためか、はたまた湿性な立地環境に生育するためか。確かに多くのアジサイの仲間は湿性な環境に生育する(写真3)。しかし、中にはコアジサイのように弱乾性の土地条件に好んで生育するへそ曲がりもいる。よく調べてみると、アジサイ属名のHydrangeaのHydrは、ラテン語で水を意味するが、Hydrangeaそのものは、さく果の形からきている。Hydr(水曜日)+angeion(容器)の意味だそうだ。最近、とある洋風レストランで、料理の飾り物として添えられたアジサイの葉を食べて中毒症状をだす騒ぎがあった。葉に含まれる成分(青酸配糖体)が胃液により分解され、青酸が発生したためという。アジサイは、結構、危険な植物でもあるのだ。

 


写真1ガクアジサイ
写真1 : ガクアジサイ

写真2アジサイ
写真2 : アジサイ

写真3ツルアジサイ
写真3 : ツルアジサイ 

写真4コアジサイ
写真4 : コアジサイ

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