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更新日:2011年10月3日

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自然探訪2011年10月 アカメガシワ

アカメガシワ (Mallotus japonicus (Thunb.) Müll.Arg.)

アカメガシワはトウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木です。名前は「赤い芽の炊き葉(かしきは)」で、幅の広い葉を食器として用いたものと思われます。サイモリバ(菜盛葉)、五菜葉(ゴサイバ)などの別名もこれを裏付けます。また、古くはヒサギ(比佐岐、久木、楸)と呼ばれていました。こちらの語源は不明ですが、おそらく、先端の芽が赤いことから「緋先」と呼ばれたのではないでしょうか。高知、長崎、鹿児島などでは現在でもヒサギと呼ばれているそうで、古い言葉は京都から遠い土地に残るという柳田国男の「方言周圏論」を裏付ける形です。万葉集に「ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く」、「波の間ゆ見ゆる小島の浜久木久しくなりぬ君に逢はずして」などと詠まれている通り、アカメガシワはもともと川原や海辺などの開けた場所に良く生える樹木です。また、山火事跡や伐採跡など、森林が破壊された場所に真っ先に生えるパイオニア植物の代表的な種でもあります。表面に脂肪分のついた黒い種子はカラス、ムクドリ、オナガなどの鳥に食べられて広く運ばれます。そして、運ばれた先が森林の中ならばそのまま何十年でもじっと休眠し、伐採などで地面に日が当たるようになると、地温の上昇に反応して速やかに発芽し、成長します。アカメガシワの名の通り、若い葉の表面は赤色の星状毛が密生して真っ赤ですが、これは星状毛に含まれるアントシアニンという色素によって若い葉を紫外線から守るためと考えられています。また、葉には花外蜜腺と呼ばれる甘い液を出す器官があり、アリを呼び寄せることでガの幼虫などによる食害を防いでいます。

さらに浅い根を横に伸ばし、ここから新しい幹を出す根萌芽と呼ばれる方法でクローン繁殖を行います。アカメガシワの材にはタンニンなどの防御物質の蓄積が少ないため虫害や菌害を受けやすく、それぞれの幹の寿命は短いですが、こうして新しい幹を次々に伸ばすことで長期間生存する戦略なのだと考えられます。

このように様々な対策によって荒れ地に適応して生きているアカメガシワですが、町の中でも普通に見ることが出来ます。花壇や道路の隙間、水路の脇などを探してみて下さい、アカメガシワの若木が生えているのがきっと発見できると思います。


アカメガシワの葉
写真1 アカメガシワの葉

アカメガシワの新葉
写真2 アカメガシワの若い葉

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