今月の自然探訪 > 自然探訪2013年 掲載一覧 > 自然探訪2013年7月 小笠原の土壌動物
更新日:2013年7月1日
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土壌動物は、さまざまな大きさをもつ多様な分類群が含まれ、落葉の分解や土壌構造への寄与などの生態系機能を持つとされています。また、土壌動物の中には、トビムシやササラダニ等の小型の節足動物がわずかな面積に多様な種を含む群集を形成するものもいることから、森林の生物多様性の重要な部分を担う動物群とも言えます(写真1)。
小笠原諸島は東京から約1000km離れた海洋島であり、本州、沖縄とは異なる生物相を示すとともに、土壌動物を含む数多くの固有種が生息することで知られています(写真2)。例えば、等脚類(ダンゴムシ、ワラジムシの仲間)、カニムシ、ササラダニ等で小笠原のみで発見されている種がいくつか知られています。等脚類の一種であるオガサワラフナムシは、本州等の海岸で見かけるフナムシの仲間ですが、海から遠く離れた森林内を住み場所としています。サワダムシ(写真3)はクモのような形をしている、ヤイトムシ目の1種で雄には奇妙な形の尾状突起があります。カニムシは一般に土壌性のものがほとんどですが、小笠原に住むテナガカニムシはヤシなどの樹上の葉の隙間を住み場所とし、非常に長いはさみをもつのが特徴です。また、小笠原諸島は陸生貝類の固有種が豊富であり、約100種のうち9割が固有種であるとされています。陸産貝類が生息する森林には、貝類を専門に摂食するとされるカタキバゴミムシの仲間も生息する事が知られています。しかし、小笠原の陸産貝類は近年その個体数、種数を大きく減少させており、その原因の一つとして移入した土壌動物である、ニューギニアヤリガタリクウズムシの捕食があげられています。土壌動物の代表選手であるミミズは、小笠原の森林において極めて普通に見られ、本州の森林と同等あるいはそれ以上の個体数を示します。しかし、現在小笠原で知られているミミズは全て移入種であるといわれています。小笠原のような小さな島では、移入種を含めた生物間、あるいは生物と生態系との相互作用が急速に進行する事が知られています。生物多様性保存のためには、地上の生物に加えて、土壌動物の生態系の変化から受ける影響、あるいは生態系に与える影響を明らかにしていく必要があるでしょう。
写真1:小笠原父島の森林
写真2:小笠原父島の森林土壌100mlから採集された土壌動物
写真3:サワダムシ
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