今月の自然探訪 > 過去の自然探訪 掲載一覧 > 自然探訪2019年10月 森林浴と健康:森に行ってみませんか
更新日:2019年10月1日
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「森林浴」という言葉をご存知でしょうか。森に行くと気持ちが良い、元気になるということを感じている方も多いと思います。「森林浴」は、1980年代に日本の林野庁長官が提唱した言葉で、日本が起源の言葉です。よって、世界中ではあまり知られてはいません。
また、日本は世界でも有数の森林に恵まれた国で、国土の約68%が森林です。世界平均は3割程度、森の国と言われているドイツでも3割くらい、アマゾンのあるブラジルでも6割弱で日本より少ないのです。
「森林浴」は、言われ始めてから30年以上経って、今では多くの人が知っている言葉になりました。世論調査によると4割近くの人が森林浴を楽しんでいます。実際にしている人は多いものの、森林浴の健康効果については、まだわかっていないことも沢山あります。例えば厚生労働省は、高血圧予防のために「食塩の量を男性8g未満、女性7g未満」を目標として示していますが、森林浴の効果については「どんな人が、何をしたら(回数、時間等)、何に効果が見込めるのか」という具体的なガイドラインはまだありません。
これまで分かってきていることの一部として、睡眠に関してご紹介します。不眠の症状は、なかなか寝付けない、途中で目が覚める、朝早く目が覚める、熟睡感がない、の4つです。お困りの方は医師にご相談されることをお勧めしますが、お悩みはあるものの病院に行くほど困ってはいない方たちには、日常生活の中で睡眠を改善することが求められています。睡眠にお困りの方たちに、午前中、もしくは、午後に2時間ほど里山で、森林浴の体験をしていただきました。その結果、午前に森林浴をした人たちより、午後に森林浴をした人たちの方が効果は大きく、睡眠が改善していたことがわかりました。よって、睡眠を良くしたいと思っている方は、午後の森林浴をお勧めします。
また、リフレッシュに関しては、一回あたりの距離や時間はあまり関係なく、ストレスを沢山感じている人により大きな効果がありました。また、回数を多く行った方が良いという事もわかってきています。つまり、特にストレスを感じている人は短時間でも短距離でも良いので、頻繁に森林に行くことが良さそうです。
「どのような森林に行ったら効果がありますか?」、「森ではなく、木の生えている公園ではダメでしょうか?」というご質問を頂くことがあります。森林も多様で、詳しいことまではよくわかっていませんし、人それぞれ森林の好みも、お近くの森林も多様と思います。まずは身近な気に入った森林を見つけていただき(写真1、写真2、写真3)、足を運んで頂くことをお勧めしています。四季の変化も楽しめます。
日本ほど森林に恵まれた国はなかなかありません。みなさん、森林に行ってみませんか?ただ、安全に楽しむには知識も必要です。安全に注意して楽しんで下さい。
(森林管理研究領域 森田 えみ)
写真1:新緑の里山(愛知県)
写真2:愛知県海上の森
写真3:雨の日の森
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