今月の自然探訪 > 過去の自然探訪 掲載一覧 > 自然探訪2025年12月 海鳥なんて、ケシカラン!
更新日:2025年12月5日
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・海鳥は森のために
「海鳥は海の鳥だろう?『森林』総合研究所で海の研究とはなにごとか!」
そう思うのももっともです。しかし、それは海鳥という名前が悪いのです。確かに海鳥は海で魚などを食べて生活します。しかし、海で卵を産む鳥はいません。ペンギンだってカモメだって、巣を作るのは陸上です。
「陸とはいえペンギンは氷の上、カモメは草原に巣を作るんじゃないのか?やっぱり森林ではないじゃないか!」
いえいえ、森に巣を作る種類もいるのです。たとえば小笠原諸島には南硫黄島という島があります(写真1)。この島では、海岸から標高916mある山頂までの森林のいたるところで海鳥が繁殖しています。
森に暮らすのはミズナギドリやウミツバメの仲間の海鳥です。これらの鳥の研究を進め、海鳥が森の中でさまざまな役割を持っていることがわかってきました。たとえば海鳥は海で魚を食べ繁殖地で排泄することで、植物の栄養になる窒素やリンを森に運びます。ときには体に植物の種子をくっつけて他の島から運んできます(写真2)。海鳥が歩き回ることで植物の成長を抑制することもあります(写真3)。こうして海鳥のいる森は、海鳥がいない森とは異なったユニークな場所となるのです。
・森は海鳥のために
海鳥は森に影響を与えます。一方で、森も海鳥に影響を与えます。
南鳥島は、日本最東端の島として有名な島です。今から120年ほど前には、この島で11種もの海鳥が繁殖していました。しかし、戦後にはたった3種に減っていました。戦前に行われた海鳥の乱獲や、開発のための森林の減少が主な原因と考えられます。
2022年、私はこの島に調査に行きました。すると、過去120年間にわたり姿を消していたシロアジサシとヒメクロアジサシが繁殖を再開している姿が見られました(写真4)。
この2種は木の枝の上に巣を作って子育てする海鳥です。南鳥島では少しずつ森林の面積が広がっており、そのおかげで樹上で営巣する海鳥がもどってきたのです。つまり森が育つことで海鳥が回復するのです。
ただし、これらの鳥が巣を作っていたのはトクサバモクマオウという外来の樹木でした。これは在来植物に影響を与えるため駆除されている樹木でもあります。海鳥の保全と外来種管理をどう両立するかが次の研究課題です。
というわけで、これからも海鳥と森の関係を研究していきます。さらなる成果をお楽しみに!
(北海道支所 川上和人)
写真1. 島中で海鳥が繁殖する南硫黄島

写真2. 体にナハカノコソウの種子をつけ過ぎたアナドリ

写真3. 海鳥の踏圧で地表が裸地化した森林内

写真4. 南鳥島で繁殖が確認されたシロアジサシ
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