ここから本文です。
冬になって葉が落ちた昭和林道の灌木の茎に、発泡スチロールのような白い粒が目立つようになりました。一見すると虫らしくありませんが、これはイセリアカイガラムシというセミやアブラムシに近縁の昆虫です。寄主は多分ハギの類のようです。イセリアカイガラムシは色々な樹木の汁を吸うので、寄生された樹木は衰弱したり、葉にすす病を起こしたりします。
オーストラリアが原産で、世界各地に移入して侵入害虫となりました。アメリカでも1860年代にカリフォルニアのかんきつが大きな被害を受けたため、原産地からこの虫の捕食者であるベダリアテントウを導入して放飼し、防除に成功しました。この事例は伝統的生物的防除法(侵入害虫に対する導入天敵の放飼)の成功例として、よく引用されています。
日本でも約100年前にイセリアカイガラムシが侵入して被害を広めましたが、ベダリアテントウを導入して防除に成功し、その後は現在まで深刻な被害を起こさなくなりました。ただ、この成功例はベダリアテントウの食性がほとんどイセリアカイガラムシに特化していたことによるものであり、特異性の低い天敵を海外から不用意に導入したため、在来の生物を絶滅させてしまったという失敗例が数多くあることを忘れてはなりません。(し)
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.