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硬質菌(サルノコシカケの仲間)であるマスタケを裏返すと,そこには黒地に赤い斑紋の大量の甲虫が潜んでいた。彼らは驚いて右往左往したのち地面に落ちたりして退散した。
写真はその数日後,残った小さなマスタケに群がっているところ。その独特の模様から一瞬オオキノコムシの仲間かと思ったが,前後に均等の取れた体型と先端が棍棒状でない触角からオオキノコムシ科の可能性は排除され,多様な形態を示すゴミムシダマシ科の一種と思われた。一部採集して同定したところ確かにモンキゴミムシダマシであった。日本全国に分布する普通種で,カワラタケ・カイガラタケなど様々な硬質菌で見られる。幼虫も同じキノコを食べる。ゴミムシダマシ科の多くは森林のキノコの裏や腐植質の中など薄暗い場所に潜んでいて,ほとんど人目につかないので馴染みがないが,少なく見積もっても世界で16000種いるとされる。ちなみに科名の学名,Tenebrionidaeは,ラテン語のtenebrae「暗闇」に由来しており,宗教音楽にもよく取り上げられるローマカトリックにおける「暗闇の朝課」テネブレと同根である。(や)
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