研究紹介 > トピックス > 研究広報特設サイト > 【特設サイト】2023年度 森林総合研究所公開講演会「持続可能な豊かな森を築くー資源を提供してくれる森を築くために今必要な事―」 > 針葉樹だけで良いのか —立木の付加価値、広葉樹利用の温故知新—
更新日:2023年11月7日
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Q1:針葉樹林業のネガティブな面がよくわかりましたので、広葉樹利用すごく重要だと思います。具体的にポジティブな事例をぜひ拡散していってください。
A1:場所によって、どのような方向性で森林を利用すべきか、大きな環境要素であることも踏まえて、多方面での利用に対する判断材料や意思決定ツールの提供が今後の研究要素として重要と考えます。
Q2:琉球諸島(奄美大島)の林業は、スダジイなどの広葉樹のチップ生産が主体です。用材利用に転換できないかと私は思っていますが、製材工場がなかったり難しい状況です。各地の事例をうかがい、転換方法のアドバイスをいただければ幸いです。(私は世界自然遺産で森林管理問題にかかわっています。)
A2:チップ材を用材に使う動きは各地でありますが、やはり製材できる場所が近くにある、できれば乾燥まで地元で行える体制があることが望ましいです。奄美大島のスダジイの森は生態系としても貴重ですので、伐採後の森林がどのような状況なのかも気になります。チップとして利用した対価をきちんと評価することも重要と考えます。
Q3:樹種により直径と価格の動きに違いがあるのは何故でしょうか?チップが主流な樹種と製品に使える樹種の違いでしょうか?
A3:一般的に、用材になりにくい(用途が少なく需要が低い)樹種では、直径が大きくても高値はつかない傾向があります。
Q4:東近江市のイヌワシが棲める豊かな森づくりを支援するファンドの取り組みを応援したいと思います。木材を高く売るためのICT技術開発研究は、どの様なものがあるのか、市場ターゲットをどう刺激するのか、していくのかという領域も研究して頂ければと思いました。
A4:ご指摘のとおり、どのような技術を付加したら木材が高く売れるか、につきましては、研究機関、民間企業等が連携して開発を進めていくことが重要と考えます。
Q5:広葉樹の収益モデルについて、ひだか南森林組合での広葉樹用材活用にも得られた収益は、モデル図の用材活用のラインにあてはまるのか、実用的なものといえるのかの検証。(ひだか南の実績をモデルに載せて)
30㎝以下の木が90%以上?とあり小径木の利用が重要とあるが、現段階で考えられる安定的な需要のある小径木の用材活用案を教えてください。
曲り木、大径木等に対応できる製材所が少ないと、現場からは聞きます。これらをさばけば製材所が山元(川上)に近い所に製材所があると利益が出やすい?(伐採業との一貫施業)
A5:今回お示しした収益モデルは、路網作設・車輛系システム・皆伐施業での試算です。ひだか南森林組合での実績とモデル値との比較は、今後可能であれば取り組んでみたいと考えております。小径木の安定的需要については、形状の制約が少ない用途のもの、たとえば森林総研で開発した「木の酒」も1つの用途と思われますし、家具としても大きな一枚板ではなく、繋ぎ合わせることで小径材を使った製品がでてきています。広葉樹資源の形状や量に応じた柔軟な生産体制の構築をどうやって作っていくかが難しいところです。ご指摘のように、山元に近い所に製材所があると伐採業との一貫施業で、原木よりも利益率の高い製材品までを扱う事業体運営が可能となり、山にお金を還元する上でも重要と考えます。
Q6:桐(キリ)早生樹の国産化、原木の高付加価値化について、森林総研として研究されていますか?(2023年度NEDOの「エネルギーの森」助成事業に採択されました。)
A6:桐に限定した研究は現状ではありませんが、早生樹等の国産未活用広葉樹材を家具・内装材として利用拡大するための技術開発に関する研究は、現在行われています。
Q7:チップ用材の生産コストと単木マッピングのフルオーダ造林ではコストが大きく違うのではないか。また、広葉樹の潜在需要として国内への輸入量を引用していたが、国内には少ない大径木や材質の輸入が多いのではないか。
A7:ご指摘のとおり、チップ用材はほぼ皆伐ですので、生産コストは「単木マッピング」の場合とは大きく異なります。単木で伐りだすのはコストが高くなるので、それに見合った用途の開拓・価格形成が必要です。輸入材は、大径材が主ですが、輸入量の減少と価格高騰を受けて、製品に占める国産材の使用比率を高めている大手家具メーカーもあります。
Q8:広葉樹は多様とは言え、地域で特定の樹種を絞って育てることによってロットはかせげるのでは?
A8:ご指摘のとおり、多様な広葉樹林から特定の樹種でロットを稼ぐのは無理があると考えます。ある程度量的に必要な樹種については、適地適木や遺伝的多様性等を十分考慮した上で、植栽、保育の検討、そのための技術開発が重要と思います。
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