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ホーム > 研究紹介 > 刊行物 > 森林総合研究所関西支所年報第43号 > 年報第43号 平成13年度関西支所の研究概要

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年報第43号 平成13年度関西支所の研究概要

ア.(イ).1.a 主要樹木集団の遺伝的多様性評価手法の開発および繁殖動態の解析(→主要成果p.25)

樹木集団における近親交配と近交弱勢の程度との関係を検討するため、近親交配の程度が異なるホオノキ3集団で人工受粉(自家受粉・他家受粉)を行い、得られた子孫について3形質(胚の生存率=[種子数]/[胚珠数]、種子量、発芽率)が示す近交弱勢の大きさ(δ: δ=1-[自殖子孫の平均値]/[他殖子孫の平均値])を推定した。その結果、3集団ともに胚の生存率は近交弱勢を示し、種子重は外交弱勢(自殖子孫の平均値>他殖子孫の平均値)を示した。発芽率については外交弱勢を示す集団と近交弱勢を示す集団の両方が認められた。胚の生存率が示すδ値は近交係数の大きな集団ほど小さく、近親交配が続くと近交弱勢をもたらす劣性有害遺伝子が除去されるという理論的予想を支持した。

ア.(イ).3.a 森林施業が森林植物の多様性と動態に及ぼす影響の解明

京都市伏見区の醍醐国有林内の26年生スギ林に調査区を設置した。この林分では、2000年に、無間伐および25%・50%・75%の3段階の間伐処理を行った区画が設置されている。このそれぞれについて、林床植生の種構成や多様性にどのような違いが見られるようになるかを今後調査していく予定である。

ア.(ウ).1.a 崩壊に瀕した大台ヶ原森林生態系の修復のための生物間相互作用の解明(→主要成果p.32)

  • 目的: 鳥獣類が森林下層部の植物群落の構造と天然更新に及ぼす影響を解明するために、ニホンジカ、ノネズミ、鳥、ミヤコザサの複合的な実験処理区において、樹木実生等の下層植生の生残・密度・形態の変化などについて定量的なモニタリング調査を行う。
  • 方法: 調査は、奈良県大台ヶ原の針広混交林内に設置してある5つの共同実験区で行った。各実験小区内に1m2の樹木実生の調査プロットを設置し、発生、生残、植食昆虫による食害量の追跡調査を、5月から11月まで月2回行った。鳥の除去の効果を調べるために、シカ除去区内の実生調査プロットの上に1m3の網をかぶせた。ササは10月に各小区でサンプル採集し、密度、重量、形態などを調べたほか、シカによるササ採食の季節変化を調べるための調査区を、実験区外に設置し月に1回の刈り取り調査を行った。
  • 成果:シカの採食による針葉樹実生の死亡率は、樹齢にともなって増加した。シカがササを食べることでササによる実生の死亡を低減させる間接的な効果は、広葉樹実生で大きかった。シカは季節的には、ササの新葉が出る8月まではササを主に食べ、それ以降に実生を食べ始めた

  • 目的: ミヤコザサが樹木実生の生存にどのように影響を与えているのか検討する。
  • 方法:実験区内での、実生調査を継続し、樹種による影響の受け方として特にウラジロモミについて検討した。
  • 成果: 1997年生ウラジロモミ実生で2001年秋まで生存していたものについて、軸長および地際直径を測定した。その結果、軸長は、シカの排除処理区において有意に長く、地際直径は、ササ排除処理区において有意に大きいという結果が得られた。

  • 目的: 大台ヶ原における過去の調査でニホンジカ侵入排除の有無とミヤコザサの除去の有無により土壌中の水溶性の無機態窒素濃度が異なることが明らかになっている。この理由として、シカやササによって表層土壌の窒素無機化速度が変化していることが考えられたため検討した。
  • 方法:シカ、ササの複合的な実験処理区において表層土壌を採取し、ピン培養法によってアンモニア化速度、硝酸化速度を測定した。
  • 成果:アンモニア化速度はササによって有意に異なり、ササリターの供給増加によってアンモニア化活性が増加したと考えられた。一方、硝酸化速度はシカ、ササによる有意な差は認められず、水溶性の硝酸濃度の変動はササの吸収とササリターからの分解によることが明らかになった。

  • 目的:ミヤコザサが樹木実生の菌根にどのように影響を与えているのか検討する。
  • 方法:実験区内でのウラジロモミ実生を掘り取り、地上部の重量や菌根の形成率を測定した。
  • 成果: ウラジロモミ実生の葉の病害はササがあると有意に多くなるが、シカ侵入下ではその効果はなくなっていた。菌根形成率はシカ、ネズミ、ササの影響を受けているとは言えず、地上部の形質で形成率に影響を及ぼしていると考えられるものはなかった。

ア.(ウ).2.a 希少・固有動物の個体群に影響を与える要因の解明

西日本におけるツキノワグマ個体群の保護管理に資するために、遺伝的指標を用いて地域個体群の孤立性および遺伝的多様性の評価を行った。今年度は、捕殺個体の収集体制を関西中国地方の5府県(京都、兵庫、島根、広島鳥取)において確立し、頭骨およびDNA試料の蓄積を行った。

イ.(イ).3.a 水流出のモニタリングと全国森林流域の類型化

  • 目的: 全国の森林理水試験地と同一手法によりデータベース化を図り、精度の高い流域水収支評価を行う。
  • 方法: 竜の口山森林理水試験地において、高精度の水文データを収集するとともに、過去に収集したデータのデータベース化を行う。
  • 成果: 北・南両谷の、1986~2000年の水文データについて、データベース化を行った。

イ.(イ).6.b 湿雪なだれの危険度評価手法の開発

  • 目的: 積雪の粘性圧縮モデルを湿雪なだれの危険度評価のための剪断強度評価モデルに応用する。
  • 方法: 十日町試験地の積雪データを利用して粘性圧縮モデルを雪崩評価のための剪断強度モデルに当てはめ、その精度評価を行った。
  • 成果: 日本の多雪地帯の多くでみられる湿雪の表層雪崩予測のために、積雪の粘性圧縮モデルと十日町試験地の積雪データを利用して積雪層の剪断応力一抵抗力関係を推定し、モデルの精度評価を行った。

ウ.(ア).1.a 被害拡大危惧病虫害の実態解明と被害対策技術の開発

  • 目的:病虫害発生情報の収集および解析を行う。
  • 方法: 病虫害発生情報にもとづいて診断と原因の検討を行う。
  • 成果: マツ枯損の相談に対して材線虫病と診断した(京都、島根)。高齢のスギの凍裂について現地調査および原因の検討を行い、スギ暗色枝枯病の現地調査と生育への影響の解析を行っている(京都府)。

ウ.(ア).1.b 集団的萎凋病の対策技術の開発(→主要成果p.34)

  • 目的: 感染木の水分通導阻害発生過程・病徴進展を解析する。
  • 方法: ナラ菌Raffaelea quercivoraを接種したミズナラをNMR-CTで観察し、菌の感染部位および通導阻害の部位でどのような情報が得られるか試みる。
  • 成果: 岩手医科大学超高磁場MRI研究施設で撮像を行った。健全なミズナラ樹幹では形成層や水分過導している道管は明らかに白く見え、通導阻害の検出に利用できる手法であると判断した。今後、共同研究を進めることになった。

  • 目的: Raffaelea quercivoraを接種したミズナラの水分生理学的・解剖学的な変化を検討する。
  • 方法: Raffaelea quercivoraをミズナラ苗木に接種し、水分生理学的測定を行った。その後、苗木を伐倒して解剖を行い、ミズナラ組織、細胞の変化を観察した。
  • 成果: 接種により枯死したミズナラ苗木はなかったが、接種を行ったミズナラの夜明け前の木部圧ポテンシャル値は対照よりも低い値を示した。接種した苗木の道管中には菌糸が観察され、閉塞物質が充填した道管も観察された。

  • 目的: カシノナガキクイムシが高密度に穿入(マスアタック)したシイ・カシ・ナラ類の集団枯損が本州・九州の各地で生じている。マスアタックが生じる原因は雄からの集合信号であることが解明されているが、終了する原因は不明である。そこで、交尾後の集合の停止が生じるかを検討する。
  • 方法: 雄成虫を40頭放して穿入させた丸太と放さない丸太を用意し、これを捕襲用の粘着紙を取り付けたケージに入れて野外に設置した。6日後に雄を放した丸太の半分に雌成虫60頭を放し、交尾させた.
  • 成果: 雌放虫前は「雌あり」「雌なし」とも「虫なし」より雌雄の捕獲数が有意に多かった。雌放出後は「雌あり」で明らかな捕獲数減少が生じ、「虫なし」と差がなくなった。このことから交尾後の集合信号の停止が示唆された。

ウ.(ア).2.aマツノマダラカミキリ生存率制御技術の開発(→主要成果p.35)

  • 目的:マツノマダラカミキリの天敵サビマダラオオホソカタムシの支所構内での野外放飼試験を行い、寄生率を明らかにする。
  • 方法: 支所構内マツ林においてアカマツ立木を地際で切断し、マツノマダラカミキリに強制産卵させた後、サビマダラオオホソカタムシ成虫を放飼して寄生率を調査した。
  • 成果: 20本の供試木のうち10本にホソカタムシ成虫を放飼した結果、放飼木における寄生率は平均34.8%(供試木ごとの最高69.0%、最低6.3%)であった。一方成虫を放飼しなかった供試木では、寄生は確認されなかった。

ウ.(ア).2.c マツ抵抗性強化技術の開発

  • 目的: 抵抗性マツ家系の苗に予備的接種試験を行い、宿主組織内での線虫の移動増殖行動を観察する。
  • 方法: 林木育種センター九州育種場で抵抗性の程度の異なる家系を選定し、線虫接種後の病徴進展の経過から今後の実験計画をたてる。
  • 成果: 九州育種場で生産されている抵抗性クロマツ家系の中から、種子生産が多く、苗木分与を依頼できる5家系を選定した。1年生苗に線虫(系統:島原)を接穂し、6週間の病徴進展および線虫の分散・増殖を調べたところ、家系間に大きなばらっきがあることを検出した。

ウ.(ア).3.b スギ・ヒノキ等病害の病原体と被害発生機構の解明

  • 目的: スギ・ヒノキ暗色枝枯病菌の分類学的所在および種内群の存在を明らかにする。
  • 方法: スギ・ヒノキ暗色枝枯病菌の菌株に対し分子系統解析を行った。.
  • 成果: 分子系統解析の結果、スギ・ヒノキ暗色枝枯病菌Guignardia cryptomeriaBotryosphaeria属に所属することが支持された.また本菌が大きく2つのグループに分かれ、両者が病原菌としての性質を異にする可能性が示された。

ウ.(ア).4.b サル・クマ等の行動・生態と被害実態の解明

  • 目的:調査地を設定し、行動観察、駆除個体の試料収集を開始する。
  • 方法: 発信機を利用した追跡により加害動物の行動観察を行った。また、駆除個体を収集し、齢査定、形態計測を行った。
  • 成果: 滋賀県に調査地を設定し、サル6群を追跡したところ行動域面積は4.7~38km2、その中で天然林の占める割合は53~87%であった。また、1996年度から2000年度の間には被害面積は漸減したがこれは電気柵の総延長の増加と関係し、駆除数との関係は明瞭ではなかった。

クマは広島県の駆除個体(13体)のオス・メス比は7:6、オスの平均年齢は9歳(4~13歳)、メスの平均年齢は6.8歳(2~17歳)、京都府のもの(10体)はオス・メス比6:2、平均年齢はオス2.1歳(0~5歳)、メスは2歳と9歳であった。京都府のクマは由良川を境に東西で明瞭な形態変異があることが明らかになった。その他、鳥取県で2個体、岩手県で67個体の頭部を収集し骨標本化した。

ウ.(イ).1.b 森林火災の発生機構と防火帯機能の解明

  • 目的: 試験地の選定を行い、林床可燃物の燃焼特性の指標として重要な限界含水率を調べる。
  • 方法: 試験地内で林床可燃物(落葉)を採取し、実験により限界含水率を測定する。
  • 成果: 山城水文試験地を当課題の試験地として選定した。試験地内で針葉樹4種、常緑広葉樹4種、落葉広葉樹6種、草本植物(ササを含む)4種の落葉を採取し、限界含水率の実験を行った。その結果、概ね0.2~0.5の範囲になることがわかった。

エ.(イ).2.a 持続的な森林管理に向けた森林情報解析技術の開発

  • 目的: バイオマス成長の実態を明らかにし、長期計測林分のバイオマスの変動予測を可能にする。
  • 成果: 収秘試験地における定期毎木調査およびバイオマス調査を実施した。

エ.(ウ).3.a 急峻山岳林における立地環境特性の解析と複層林への誘導のための森林生態系変動予測技術の高度化

  • 目的: 人工林で下層植生を維持する密度管理の検討を行う。
  • 方法: 保育施業と下層植生の変化を明らかにする。
  • 成果: 下層植生を維持する施業指針の案ができた。

オ.(ア).1.c 国際的基準に基づいた生物多様性及び森林の健全性評価手法り開発(→主要成果p.34)

  • 目的: 森林の健全性を評価する技術について検討する。
  • 方法: 立木樹幹内の水分分布の検出手法を検討する。
  • 成果: 樹木の健全性および生理状態を把握するには樹幹内の水分分布が重要な指標になると判断し、コナラ、アカマツなどのNMR-CTによる画像から得られる情報を解析した。

オ.(イ).1.a 酸性雨等の森林生態系への影響解析

  • 目的: 1)関西モニタリングステーションにおいて降水・渓流水の観測を開始する。2)スギ林における土壌溶液特性を把握し、Mn、Al濃度範囲を明らかにする。
  • 方法: 1)京都府山城町の山城水文試験地および京都市山科区の安祥寺山国有林において林外面(降水)、渓流水を月に2同定期的に採取、分析をする。2)安祥寺山国有林内のスギ林で樹幹周囲、樹幹間土壌溶液の採取、分析を行う。
  • 成果: 安祥寺山スギ林における土壌溶液中のMn濃度範囲は0.00mM~0.2mM、Al濃度範囲は0.00mM~0.57mMであり、これまでスギ苗を用いたモデル実験における閾値から、MnやAl濃度はスギに負の影響を与える濃度以下であることが明らかとなった。

オ.(イ).2.a 森林資源量及び生産力の全国評価(→主要成果p.26)

  • 目的: 枯死部分のサイズ分布から枯死速度を推定する。
  • 方法: モデルに枯死速度を計算するモジュールを追加し、全体の純生産速度と分解速度を計算した。
  • 成果: 銀閣寺山国有林を対象としてシミュレーションモデルを実行した。その結果、純生産量は、落葉広葉樹大経木の減少にともないいったん減少するが、常緑広葉樹の成長に伴い再び増加に転ずるという結果が得られた。

オ.(イ).2.c 人為的森林活動及び森林バイオマスのポテンシャリティー評価

  • 目的: 従来の製材加工システムに、残廃材を活用したバイオマス・エネルギー利用を組み込んだモデルを構築し、技術面・経済面の両側面から、木材加工過程における木質バイオマス・エネルギー利用システムの適用可能性を検討する。
  • 方法: 国産財大型製材工場での残廃材発生・利用の事例調査を通して、そこでの木材加工・残廃材利用フローを把握し、工場内での残廃材を利用した木屑焚ボイラーによる木材乾燥システムの経済性・重油代替効果の検討を行う。
  • 成果: スギ・ヒノキ素材消費量・月間2,500m3規模の国産財製材工場のケースでは、モルダー加工屑を主燃料とした木屑焚ボイラーによる木材蒸気乾燥(中温)の場合、蒸気熱供給の約50%をカバーし(残りは重油)、コスト的にもほぼ重油使用の乾燥と見合うことがわかった。蒸気熱供給割合を高めるためには、樹皮の活用度を高めることが課題と考えられる。

  • 目的: 多様な施業に対応した収穫予測を可能にするために、岩手地方カラマツ人工林を対象にシステム収穫表を作成する。
  • 方法: 既成の「岩手地方カラマツ林分収穫表」を解析し、林分成長モデルのパラメータを導出する。導出したパラメータを用いてコンピュータプログラムを記述し、各種の間伐方法に応じた収穫表を調製する。
  • 成果: 岩手地方カラマツを対象とした林分成長モデルのパラメータが導出され、システム収穫表プログラムが作成された。これにより、各種の間伐方法に応じた成長・収穫量をシミュレーション予測することが可能となった。

オ.(イ).2.d 森林生態系における炭素固定能の変動機構の解明

  • 目的: フラックス観測値の精度について、検討を加える。またCO2フラックスのモニタリングを行い、昨年度と今年度におけるフラックス計算値の比較を行う。
  • 方法: 潜熱・顕熱フラックスを乱流変動法によって観測を行った.またCO2フラックスのモニタリングをREA法によって行った。
  • 成果: 潜熱・顕熱フラックスと純放射量などを比較し、両者がほぼ等しければ、潜熱・顕熱フラックスの観測精度は高いと判断される。両者の一致具合は風向依存性がきわめて高いことが明らかになった。山側から風が吹いている場合には、観測精度は低かった。REA法によるCO2フラックス測定値は、昨年度に比べて本年度は大きく増加した。これは、REA法がまだ開発途上にあるためであり、技術改善が必要であることがわかった。

オ.(イ).2.e 多様な森林構造におけるCO2固定量の定量化(→主要成果p.29)

  • 目的: 自動葉群チャンバー内における葉面積推定手法の開発を行う。
  • 方法: 目視による葉数の計数、機械による推定を開始する。
  • 成果: 自動葉群チャンバー内の葉数を目視によって計数し、デジタルカメラによって記録した。落葉についてはリタートラップをチャンバー下部に設置して計量した。平行して携帯型光合成蒸散風測定装置で光合成速度を測定した。

  • 目的: 京都府山城試験地で、複雑地形下における乱流変動法によるCO2フラックス測定の妥当性の検討を行う。
  • 方法: 乱流変動法によるCO2フラックスの測定と、その評価のためのチャンバー法による測定を行う。
  • 成果: 京都府山城試験地において複雑地形下の森林におけるCO2固定量の評価のために、乱流変動法については尾根と谷の2カ所とさらに、チャンバー法による土壌呼吸と枝呼吸のCO2フラックス測定を行い、乱流変動法の特に安定条件下おける夜間の呼吸量妥当性の検討を行った。

オ・(イ).2.g 森林土壌における有機物の蓄積及び変動過程の解明

  • 目的: A0層から溶出する溶存有機物(DOC)におよぼす温度の影響および雨水の影響をモデル実験によって解明する。
  • 方法・結果: L層、F層を培養して定期的に脱イオン水で抽出される溶存有機物(DOC)量を測定した。その際に温度条件および抽出間隔をそれぞれ3水準とした。DOC生成量は15℃から25℃では増加したが、30℃と25℃では同じであうた。DOCは生物分解過程に由来するものと抽出回数に依存する非生物溶出に区別されることが判明した。

オ.(イ).3.a 地球温暖化による生物圏の脆弱性の評価に関する研究

  • 目的: 温暖化が日本の積雪環境に与える影響を評価するためのモデリングを行う。
  • 方法: アメダステータとGCMモデルの結果を用いて3次メッシュでの積雪変動を予測する。
  • 成果: 温暖化が日本の積雪環境に与える影響を評価するためにアメダスの降水量、積雪深、気温のデータを用いて3次メッシュでの積雪予測モデルを作り、温度の変化に伴う積雪環境の変動特性の推定を行った。

地球温暖化によって、マツ材線虫病被害の激化、あるいは被害未発生地域での被害発生が懸念されるので、1)マツノマダラカミキリの成長と成虫行動の気温特性、2)現状の気温分布、3)温暖化予測、および4)現在のマツ林の分布に基づいて、今後のマツ材線虫病被害の危険地域マップを作成した。現在のマツ材線虫病被害の最前線の北方にはマツ林がほぼ連続的に存在するが、被害が人間活動になんらかの支障をきたす林への拡大が実質的な問題となる。青森県北部の日本海側、太平洋側それぞれの海岸クロマツ林がそれに相当するgこうした地域は、温暖化予測によれば、20年先には被害の気温条件が整うし、1998-2000年の3年間の平均気温は現在の最前線の平年値に匹敵する。

カ.(ア).1.a 各種林型誘導のための林冠制御による成長予測技術の開発

  • 目的: 長伐期林の林分構造を調査する。
  • 方法: 吉野地方のスギ長伐期林で林分構造を調査した。
  • 成果: 吉野地方での長伐期林は、生育が進むに従い個体成長を促進する低密度管理にすることがわかった。

  • 目的: 正常収穫表と民有林密度管理図、収穫試験地の比較を通して、高齢級人工林の成長特性や現行収穫表の妥当性等について考察する。
  • 方法: 紀州地方スギ林林分収穫表(林野庁1953)および南近畿・四国地方スギ人工林林分密度管理図(林野庁1980)の標準地資料と、高取山・高野山・滝谷・白見の各収穫試験地の林分統計量を用いて解析した。
  • 成果: 平均胸高直径と本数密度との関係に注目すると、収穫試験地や密度管理図の標準地は、収穫表の標準地に比べ、相対的により遅い成長段階にいたるまで高い密度を保っている傾向が見いだされた。

カ.(ウ).1.a 供出および育林コストに及ぼす諸要因の解明

本課題は、人工林を対象に作業条件や生産目標に応じた作業コストを明らかにするため、高性能林業機械システムを対象とした供出コスト、および保育を対象とした育林コストに及ぼす諸要因を解明することを目的としている。育林コストに関しては、統計的な資料は整備されてはいるが、作業条件や保育形式との関連、省力化や低コスト化との関連での取り組みが不十分である。この中で、当支所は、保育形式による施業の違い、それに省力化や低コスト化の実態を明らかにすることを分担した。初年度は、集約施業の代表である吉野林業で、下刈り回数や除伐などの初期保育の実態を検討した結果、以前と同様の施業が行われていることが明らかになった。

キ.(ア).1.a 都市近郊・里山林の生物多様性評価のための生物インベントリーの作成(→主要成果p.33)

各研究対象(小型哺乳動物、鳥類、節足動物、微生物)の共同調査地を選定し、予備調査を開始した。アカネズミ類と堅果との相互作用における栄養学的解析、マツ樹皮下穿孔虫の天敵類の産卵行動実験を開始した。

  • 成果:
    1) マツ樹皮下穿孔虫の天敵であるキタコマユバチ雌成虫の産卵行動の解発には、寄主サビカミキリ幼虫の出すフラス(糞まじりの木くず)の成分が刺激になっていることを明らかにした。
    2) コナラ属堅果の摂食が、アカネズミの体重減少や窒素消化率の低下を引き起こすことを認めた。
    3) 微生物の分類に必要な電気泳動による塩基配列の相違を検出する手法が、暗色枝枯病菌の種内群の判別に有効であることを確認した。
    4) 滋賀県野洲町において昆虫捕獲のためのマレーズトラップ(4器)によって捕獲されたカミキリムシ科の種を同定して、5月~9月に出現したカミキリムシ科の種名と個体数のリストを作成した。

キ.(ア).1.b 人と環境の相互作用としてとらえた里山ランドスケープ形成システムの解明

  • 目的: スギ・ヒノキ混交林での種間競争の調査を行う。
  • 方法: スギとヒノキが縦方向に3列ごと交互に植栽された51年生の混交林で、成長調査を行った。
  • 成果: 土壌型はBD(d)であったが、スギはヒノキに比較して無間伐、間伐区(23、29年生で間伐)での平均樹高がそれぞれ6.5、6.4m高く、平均胸高直径もそれぞれ13.2、13.3cm大きかった。

  • 目的: 過疎化が進行する山間部における里山ランドスケープ構造の特徴と、その変化に関連する環境要因を明らかにする。
  • 方法: 地形図や森林簿などの地図データおよび地域住民に対するヒアリング調査から、里山ランドスケープと関連する土地利用の変化の過程を把握した。
  • 成果: 丹後半島山間部を対象に、1900年以降の里山ランドスケープ構造の特徴、変容過程を把握した。里山ランドスケープは1970年頃を境に急激に変化し、変化の方向は「利便性」と「自然立地」という2つの要因によって大きく規定されていた。

  • 目的: 現代の里山系内における住民の環境認識を明らかにする一端として、里山管理活動を行っている団体の活動について事例調査を行うことを目的とした。
  • 方法: 滋賀県志賀町の里山をフィールドとして管理活動を行っている団体Y会を対象に、設立経緯やこれまでの活動状況、重視している活動と今後の展開について関係者から聞き取り調査を行った。
  • 成果: Y会は1997年に設立され、里山に地域住民の関心をひきつけることを目的に、様々なイベントを組み、その拠点となる里山林の管理を進めてきた。活動を通して作られてきた地域間のネットワークを契機に、上流の里山から下流のヨシ帯につながる環境を一体のランドスケープととらえた活動を行うに至った経緯が明らかとなった。

  • 目的: 景観の歴史的変化の過程を調査する。里山林の群落構造の調査を行う。
  • 方法: 琵琶湖湖西の志賀共同試験地において、基本的に0.04haの固定調査地を50ヶ所設置し、毎本調査の結果をもとに、林型の類型化を行った。
  • 成果: 1)50ヶ所の固定調査地の内、針葉樹人工林ではない33個所について、プロットごとの胸高断面積による種別の組成比を算出し、その類似度により類型化を行った。2)その結果、それぞれアカマツ、アベマキ、クヌギが優占する3つのグループに分かれた。

  • 目的: スギ、ヒノキ混交林での種間競争の調査を行う。
  • 方法: 針葉樹人工林に侵入した広葉樹の初期成長についての既存資料の整理を行った。
  • 成果: 侵入した広葉樹と植栽木との保育段階における競争は、立地により様々であり、侵入広葉樹の取り扱いについての一律なマニュアル化は行えないことを示した。

  • 目的: 試験地の選定を行い、試験地の基礎データとするため植物相の調査・整理を行う。
  • 方法: 1993年以降に収集された植物相のデータを整理するとともに、試験地内を踏査して新たに観察された植物種をリストに加える。
  • 成果: 山城森林水文試験地を試験地として選定した。当試験地では1993年以降、植物相の調査が行われ、1994年と1999年には毎本調査も行われている。今回これらの資料を整理したところ、当試験地周辺でシダ植物14科48種、種子植物58科183種が記録された。

  • 目的: 基礎資料の収集および整理を行う。
  • 方法: 銀閣寺山国有林試験地の出現植物種の取りまとめを行うとともに、実生調査を継続した。
  • 成果: 1992年以来の銀閣寺山国有林試験地の調査資料をとりまとめた。特に希少な植物は確認されなかったものの、面積1.05haの試験地内に50科111種の維管束植物が記録されていることを確認した。

キ.(ア).1.c 都市近郊・里山林における環境特性の解明(→主要成果p.3031)

  • 目的: 林床面CO2フラックスの時間変動を解明する。.
  • 方法: 林床面CO2フラックスの自動測定システムにより、30分ごとの測定を常時行った。
  • 成果: 日中に最小、夜間に最大となる日変化が観測された。これは地中20cmの地温変化と同調するものであり、根呼吸などによる地中の比較的深い部分から主にCO2が放出されているものと考えられる。降雨イベント後の1-2日間は、CO2フラックスが増加するとともに、日変化は認められなくなった。落葉層などの含水率が増加し、地表面付近からもCO2が放出されるためと思われる。

  • 目的: 山城試験地において複雑地形下における熱・水蒸気収支の特性の評価を行う。
  • 方法: 山城試験地内に設定された2基の気象観測タワーでの微気象測定を行う。
  • 成果: 山城試験地内に設定された2基の気象観測タワーで、乱流変動法と一般気象測器による放射項を含めた微気象を連続観測し、熱・水収支に関して、その特性の評価を行った。

  • 目的: 関西地域の里山における環境負荷物質である窒素の流入・流出を調べる。
  • 方法: 京都府山城町で降水、土壌水、渓流水の採取装置を設置し、サンプルの採取を行うとともに、山科川および安祥寺川で渓流水の多点調査を行った。
  • 成果: 京都府山城町で降水、土壌水、渓流水の採取装置を設置し、サンプルの採取を行うとともに、山城および安祥寺川で渓流水の多点調査を行った。

  • 目的: 葉面におけるCO2交換量の長期連続観測手法を開発する。
  • 方法: 自動葉群チャンバーを開発し、CO2交換量の季節変動特性を評価する。
  • 成果: 自動葉群チャンバーシステムの冷却効果、換気効果、精度の検討を行い、本システムの有効性を確認した。コナラ葉群について季節変化を調べた結果、夜間CO2フラックスと気温との間に季節ごとに異なる関係が認められた。

キ.(ア).1.d都市近郊・里山林の管理・利用実態の解明(→主要成果P.36)

  • 目的: 近畿地区において、都市近郊・里山林の管理ならびに利用(放置)実態の調査分析を開始する。
  • 方法: 木質バイオマス利用を組み入れた里山林の循環利用の可能性・問題点などについて、地域調査・情報収集を行い、新しい仕組みの検討に着手する。
  • 成果: 兵庫県青垣町、三軍県飯南町などでの調査から、里山の未利用・放置化森林を活かしたいとの自治体二一ズが格段に高まっており、木質バイオマス利用を1つの柱とした、従来の林業・木材振興とは異なった視点からの取り組み(構想・実験段階)が進みつつあることがわかった。可能性を検討するための計量的評価体系づくりが躁題である。

  • 目的: 近畿地方における二次林の面積、分布および樹種等を把握し、里山林の木材供給カを推定するための基礎情報を整備する。
  • 方法: 1990年林業センサス市区町村別統計、自然環境情報GIS第2版(環境庁自然保護局、1999年)の現存植生図、1/25,000地形図相当の行政界・道路位置等を資料とし、GISを用いて解析した。対象地域は近畿2府4県と三重県および福井県嶺南地方とした。
  • 成果: 第5回基礎調査の現存植生図における近畿地方の二次林は116万ヘクタールで、そのうち50%はアカマツ群落、25%がクヌギ・コナラ林であった。地域的に見ると福井県嶺南や滋賀県ではブナ・ミズナラ林、和歌山県や三重県ではシイ・カシ林も多かった。二次林の30%は田畑の外縁から200m以内、48%は400m以内に存在し、二次林の多くは、植生内容だけでなく地理的関係においても里山的性格が強いものと考えられた。田畑の外縁から200m以内の植林地面積は、同範囲の二次林面積の2/3程度に相当し、人工林もまた里山の構成資源として無視できない割合を占めていることがわかった。

  • 目的: 都市近郊・里山林の管理・利用実態を解明する前提として、「里山」の意味の確認とその想定される範囲の限定を行う。
  • 方法: これまでの里山に関する研究サーベイおよび行政の対応をまとめ、そこにおける問題点を摘出する。
  • 成果: 里山に関して、研究面からは、生態学・造園学分野において活発に議論が行われてきたが、林政学分野においてはさほど活発とはいえない状況である。一方行政においては、一般に広まっているのに比べ、積極的に取り上げようという姿勢は捉えがたい。それは、「里山」という言葉が行政に定義付けされにくい「情緒的な何か」を含んだもの、および定義のない「曖昧な存在(空間)」として理解されているためと考えられる。

  • 目的: 都市近郊・里山の竹林における生産活動の現状を把握する。
  • 方法: 1)アンケート調査(H12年度実施)の分析(大原野地区・山城地区)、2)竹材生産業者へのアンケート調査・聞き取り調査の実施・分析(亀岡市)、3)大分県の竹材生産関係業者への聞き取りを行う。
  • 成果: 1)竹林所有者へのアンケート調査(H12実施)によれば、放置した竹林面積割合(放置率)の高い竹林所有者ほど今後更にタケノコ生産を縮小・廃止しようと考えている割合が高く放置竹林の増加を示唆していると考えられた。2)1993年当時11件あった亀岡市の竹材生産業者は高齢化等による廃業により現在7件に減少している。亀岡市近郊のマダケ材生産休では、伐採・搬出に便利な林道沿いの竹林の伐採、需要の見込めるマダケのみの抜き伐り等により竹林の低質化と放置化が進んでいる現状にある。3)大分県東国東地域では放置竹林の間伐適期人工林への侵入被害事例がみられ、竹材生産活動の低迷とその担い手不足が深刻である。

  • 目的: 近畿地方における都市近郊・里山林の面積、地域的分布の状況を把握し、里山林の管理ならびに利用(放置)の実態解明に向けた基礎的情報を整備するとともに、現地事例調査を開始する。
  • 方法: 1990年林業センサス、自然環境情報GISデータ等を用いた解析を行い、近畿地方における二次林面積、農地周辺に賦存する「里山林」の地域的分布特性等を把握する。
  • 成果: 近畿地方における二次林賦存状況を分析した結果、その総面積は116万haあり、全森林の51%を占める。この二次林を農地からの距離別に見ると約半分(48%)が400m以内に存在していることがわかった。この農地外縁から400m以内にある二次林を、古くから農民に利用されてきた山林すなわち「里山林」と捉え、市区町村別に総土地面積に占める割合を見た。それによると京都府北部・兵庫県北部に「里山林」(植生はアカマツ群落クヌギ・コナラ林)が30%以上を占める地域が広がり、その周辺に20~30%の市区町村が分布する。一方、10%に満たない主な地域は、大阪・京都の森林の少ない大都市部、および吉野・尾鷲・龍神などスギ・ヒノキ用材林業が活発に展開し人工林率が高い紀伊半島に広がる。今回のデー・タ解析を通して、近畿地方における里山林の分布は一様ではなく、かなり地域性をもって広がっていることが確認できた。なお、現地調査では、京都市近郊竹林の管理利用実態を探り、タケノコ生産の縮小と放置竹林拡大の地域的特性・時期的変移を社会経済的側面から明らかにした。

キ.(ア).2.b スギ花粉症克服に向けた総合研究

間伐率とスギ花粉生産との関係を検証するため、醍醐国有林(京都大阪森林管理事務所管内)の26年生スギ林に調査区を設置した。2000年にこの調査区内で各段階の間伐処理を行った。処理の内容は、無間伐(対照区)・25%間伐・50%間伐・75%間伐である。この調査区内にリタートラップを設置して、2001年春の雄花生産量の推定を行った。その結果、雄花生産量はそれぞれの処理区で、195.8・105.5・110.8・90.9kg/haとなり、間伐により雄花生産量が抑制されることがわかった。ただし、2002年からは陽樹冠面積の増加により、間伐処理区で雄花生産が促進されることも考えられるので、継続して調査する必要がある。

キ.(ア).2.c 保健休養機能の高度発揮のための森林景観計画指針の策定

  • 目的: 嵐山の森林景観構成上で特に重要なヤマザクラの生育状況と風致上の特徴を明らかにする。
  • 方法: 嵐山国有林内で植樹祭に伴って設定された12調査区のヤマザクラの経年変化、主要な視点からの見え方を測定した。
  • 成果: 嵐山国有林内のヤマザクラの生育状況、風致的な観点からの分析から、日照条件や獣害の程度によって生育上、風致上の役割に大きな相違があり、今後の植樹祭の際の適地選定や植栽後の管理の重要性が示された。

  • 目的: 実行課題全体では、森林の保健休養機能をミクロな生理・心理的レベル、マクロな地域社会レベル、その中間の行動レベルからとらえることで、保健休養的価値を向上させる森林景観デザイン指針、および適切な配置・ゾーニングシステムを提示することを目的としている。本課題はその内、行動レベルから森林景観デザイン指針を提示する部分を担っている。今年度は研究対象とするレクリエーション林の環境条件を把握すること、および景観評価と行動解析に関して方法を確立するための予備的調査を行うことを国的とした。
  • 方法: 事例対象地とする林分の環境を照度などの面から記録、解析した。また、森林景観評価と行動解析については標識サンプリング法を用いて予備的調査を行った。
  • 成果: 調査対象とする林内トレイルを設定し、そのルート上の照度のシークェンスを明らかにした。標識サンプリング法調査においては、現地での景観評価と写真による景観評価の差異を明らかにするための経時的郵送調査を行った。現地-6週後-1年後の変化を追うための郵送調査に対する回答率は、1年後の段階で60%を超える高率であった。

サ.(イ).1.a 持続的な森林管理・経営の担い手育成及び施業集約・集団化条件の解明

  • 目的: Iターン等による林業への就業希望者とそれを希望しながらも断念した者の属性および意識の違いを解明する。
  • 方法: 京都府林業労働支援センター(以下、支援センター)が毎年夏に行っている林業体験活動グリーンスカウト参加者に対して、就職に関する意識の聞き取り調査を行った。その後、10月に行われた支援センター主催の合同説明会でグリーンスカウトの参加者に対して、就職活動の状況についての後追い調査を行った。
  • 成果: 10月の合同説明会時点においてグリーンスカウト参加者15名のうち、既に4名が林業への就職を断念していた。就職活動中の11名と比較すれば、年齢が若干低く(20代前半)、就職経験がない(現在アルバイトもしくは学生)、といった違いが見られた。

シ.(-).2.b 収穫試験地等固定試験地の調査(→研究資料p.4143)

  • 目的: 年次計画に沿って定期調査を行う。
  • 方法: 茗荷淵ヒノキ、白見スギ収穫試験地の定期調査を行う。調査項目は胸高直径、樹高、枝下高および寺崎式樹幹線区分の全数調査とする。調査データは現有のデータベースシステムに登録する。
  • 成果: 10月29日~11月2日に両試験地の調査を行った。測定は細田和男および田中邦宏が行い、補助作業員として延べ12人・日を現地雇用した。

シ.(-).2.c 森林水文モニタリングネットワーク

岡山県南部に位置する竜の口山森林理水試験地は、日本の少雨地帯を代表する理水試験地のひとつであり、降水量・流出量に関する基礎データを長期間にわたって測定している。これらのデータは継続・安定して取得することの困難な森林地域における貴重な観測資料であり、災害に関わる洪水流出や水資源問題には不可欠な流出量の指標として社会的需要の高いものである。本業務は竜の口山森林理水試験地において正確で確実なデータ蓄積を図るとともに、森林総合研究所本支所全体で理水試験地のデータベースを一元化し、データ処理の効率化を促進することが目的である。こうして得られたデータは、各分野の研究者、あるいは行政機関など多方面で利用可能な形式に変換され定期的に公表される。