第33回日本菌学会奨励賞（中村 慎崇）

中村 慎崇（森林総合研究所 九州支所）

樹木の根部に定着するビョウタケ目菌類の探索及び生殖生態の解明に関する功績。

分離培養法によりブナ科樹木根部生息菌相を解明し、分子系統と形態の統合的解析から、新属Glutinomycesを創設、4種を新種記載した。さらに、in situ染色法など新手法を用いて宿主内における生態的知見を得ると共に、G. brunneusについては集団遺伝学的に解析することで、生殖に関する知見を得ようとした。その結果、本菌は有性あるいは擬似有性生殖を行っていることが示唆され、後者の存在については室内実験による証明を行った。これら一連の成果は、メタゲノム解析などで森林樹木根圏での優占が指摘されながらその実体が不詳であったビョウタケ目菌類について、新たな分類的、生態的、遺伝的知見をもたらした。