平成15年度 研究成果選集 2003

平成15年度 研究成果選集 2005を一括ダウンロード（PDF：66,933KB）

ア 森林における生物多様性の保全に関する研究

• 森林動態データベースの公開（PDF：2,030KB）
  日本各地に設定した貴重な天然林試験地の毎木データ、稚樹データ、実生データなどをデータベース化し、公開した。
• チョウ類の多様性と里山の管理-落葉広葉樹林の二次遷移にともなうチョウ類群集の変化-（PDF：2,691KB）
  チョウの種数や個体数は、若い二次林には多かったが、高齢二次林には少なかった。しかし、高齢二次林は原生林を好むタイプのチョウをはぐくんでいた。チョウ類の多様性を保全するためにはどのようにしたらよいのだろうか？

イ 森林の国土保全、水資源かん養、生活環境保全機能の高度発揮に関する研究

• 樹木の細根は成長と枯死を繰り返す（PDF：3,412KB）
  スギ人工林における細根の成長と枯死について解析した結果、細根の成長と枯死は両者ともに夏季に盛んで、1年間の細根成長量、枯死量は細根の平均バイオマスを大きく上回ると考えられた。
• どこの山が、いつ崩れるか、リアルタイムで予測する（PDF：1,089KB）
  レーダーアメダス6時間降雨予測情報と、対象流域の地形・土質データ等を使って、今後、6時間後までの間にどこで、いつ表層崩壊が発生するか予測するシステムを開発した。
• 斜面崩壊の到達範囲を予測する（PDF：15,104KB）
  斜面崩壊の到達危険範囲を予測するために、崩壊現象を粒状体の集合の運動として再現する数値シミュレーションモデルを開発するとともに、実規模の崩壊実験を行ってモデルの妥当性を検証した。

ウ 森林に対する生物被害、気象災害等の回避・防除技術に関する研究

• かたちと遺伝子に残るスギカミキリがたどって来た道（PDF：1,355KB）
  スギやヒノキの材質劣化害虫であるスギカミキリの形と遺伝子を地域間で比較した。その結果、日本海側と太平洋側では遺伝的に異なる集団が存在することが判明した。
• ブナの実がならない年はツキノワグマが里に出てくる？（PDF：1,120KB）
  東北地方では、ブナの実のりが大豊作から大凶作へと変化するとき、人里域に出没して有害駆除されるツキノワグマの数が急増する。この関係を人身被害防止のための警報システムづくりに生かすことができるだろう。
• 木の揺れを計る（PDF：2,329KB）
  強風で林木の幹が揺れるときの揺れ回数を測定する測器を開発した。本機の開発により林木の風に対する抵抗力を客観的に評価することができる。この測器のデータは風害に強い木を作るための枝打ちや間伐の改善のために利用できる。

エ 多様な公益的機能の総合発揮に関する研究

• 原生林に住むアリにとって二次林は住みやすいか（PDF：2,103KB）
  人工林など二次林での森林の機能を評価するために、原生林に住むアリ類の種構成を二次林や人工林と比較して解析した。二次林では原生林に住むアリはみられず、森林伐採の影響が数十年後まで依然として残っていた。
• 西南日本では強風がどこでどれくらい吹いているか（PDF：4,275KB）
  台風常襲地域の西南日本において森林管理上の強風対策をたてるため、強風の発生頻度を広域的に推定した。九州北部と南部とでは大型台風の頻度に較差がみられ、それに合わせた強風対策が必要であることを示した。

オ 地球環境変動下における森林の保全・再生に関する研究

• イオウを貯める土・貯めない土-イオウが多い日本の土壌のナゾ-（PDF：1,595KB）
  酸性雨に含まれるイオウは土壌中でどのような運命をたどるのか。我が国に広く分布する火山灰土壌は欧米の土壌に比べ著しく多量のイオウを貯め込んでいた。その現状と貯める仕組みを明らかにした。
• 複雑な地形にある森林の二酸化炭素収支の計測（PDF：2,227KB）
  尾根、谷に囲まれた複雑な地形にある森林で乱流変動法によるC02交換量の観測を行う場合、風のない夜間の呼吸量の測定が困難であることが分かった。そこでチャンバー法を併用することによって精度向上をはかった。
• 森林土壌による炭素蓄積分布図の作成（PDF：996KB）
  既存の土壌調査データと国土数値情報を利用して日本の森林土壌による炭素蓄積分布図を作成した。その結果、森林土壌による炭素蓄積の全国的傾向を明らかにした。
• 水不足で形成された葉は光にも強くなる（PDF：985KB）
  乾燥ストレスの下で形成された葉では、気孔閉鎖により葉肉C02濃度が低下した際でも、電子伝達能力を高めることで光化学系2.への過剰なエネルギー集積を防ぎ、光阻害を回避していることが明らかになった。

カ 効率的生産システムの構築に関する研究

• 新たな木製擁壁の開発（PDF：3,029KB）
  林道の曲線部分や基礎地盤に勾配の変化のある部分に設置するのに最適な、小さな曲線半径、地形の凹凸に柔軟に対応しうる新たな木製擁壁を開発した。
• システム収穫表LYCSの改善と列状間伐林への応用（PDF：1,877KB）
  多様な密度管理に対応して収穫予想表を作成するプログラムLYCSについて、全国のスギ林に適用でき、表計算ソフト上で利用できるように改善した。さらに、LYCSを列状間伐にも応用し、間伐方式別の収穫予測量を比較した。

キ 森林の新たな利用を推進し、山村振興に資する研究

• 観光レクリエーションのため、森の管理が効果的な場所とは？（PDF：3,527KB）
  観光レクのために森林管理を行うと効果的な重要地区を判定するとともに、その地区の地形や土地利用の特性や観光レク資源・施設の特性を解析し、地域森林計画区における森林管理の方向性を示す手法を開発した。

ク 木質資源の環境調和・循環利用技術の開発に関する研究

• 樹木中のリグニン・炭水化物間化学結合の解明 -樹木化学成分の有効利用を進めるためのキーポイント-（PDF：2,942KB）
  オゾン処理・酸処理を用い、リグニン・炭水化物間化学結合を切断することなく樹木から単離することを試みた結果、従来証明されていなかったリグニンとヘキソース(グルコース・マンノース・ガラクトース)間に化学結合が存在することが明らかにされた。
• 超臨界水及び亜臨界水処理による木質資源の高速糖化（PDF：1,335KB）
  環境負荷の小さい超臨界水及び亜臨界水処理法を用い、木質資源からバイオエタノールの原料となるグルコースやオリゴ糖などの糖類を高速かつ高効率で生産する方法を開発した。
• 木材の燃焼によって生成するダイオキシン類（PDF：817KB）
  小型焼却炉を用いてスギの燃焼試験を行った結果、バッチ式の方が連続投入方式よりも、また、無機塩素添加材の方が未処理材よりもダイオキシン類生成量が増加した。
• デシケータ法を利用した建材からのアセトアルデヒド放散量の簡易測定法（PDF：827KB）
  デシケータ法を利用して木質建材からのアセトアルデヒド放散量を測定する簡易法を開発した。本法は、非ホルムアルデヒド系接着剤を用いた建材にも適用することができる。

ケ 安全・快適性の向上を目指した木質材料の加工・利用技術の開発に関する研究

• 木質構造接合部の新たな補修・補強方法とその効果（PDF：1,974KB）
  大地震などにより傷んだ接合部を補修する新しい技術として減圧による接着剤充填方法を開発した。充填方法を加圧から減圧に変えることで多くの利点が生まれた。実大試験体を使った加カ実験で、その効果を確認した。
• 建築廃材木炭で床下の調湿（PDF：1,179KB）
  布基礎の内部に建築廃材木炭を敷きつめた結果、床下の温度は変わらなかったが、相対湿度は外気並みに低くなった。木炭が水分を吸着する機能を利用することで、床下の湿気を減らせることが分かった。

コ 生物機能の解明と新素材の開発に向けた研究

• 縄文時代後期に埋没したスギのDNA分析（PDF：2,054KB）
  三瓶小豆原埋没林から出土したスギの大型遺体からDNAの単離と核遺伝子の人工的な増幅に成功した。埋没スギの遺伝子は現存する天然スギの祖先的な塩基配列であることが明らかになった。
• スギの培養細胞からクローンスギの作出に成功（PDF：2,400KB）
  被子植物で報告されている細胞増殖因子ファイトスルフォカイン(PSK)が裸子植物であるスギでも機能していることを発見し、このPSKを利用することで、スギの培養細胞を効率的に不定胚へ分化させることに成功した。
• エノキタケ廃菌床の子実体形成促進物質-廃菌床の再利用に向けて-（PDF：1,191KB）
  エノキタケの廃菌床を4つの成分に分画し、エノキタケの色素脱色能を指標にして調べた結果、エノキタケが培地中に子実体形成を促進する何らかの物質を生産していることを明らかにした。

サ 森林・林業・木材産業政策の企画立案に資する研究

• 人と森林の距離（PDF：869KB）
  1980年以降の人口動態と森林の分布について、既存の数値地理情報を用い、森林率別人口、森林までの距離別人口の点から分析を行い、多くの人は森林の近くに住んでいることがわかった。

シ 基礎基盤等研究、調査・観測

• コーナー博士によリ新種記載されたサルノコシカケ類の分類学的検討（PDF：3,203KB）
  コーナー博士により報告されたサルノコシカケ類には既知属に含まれないものがあり、3新属を記載した。東南アジアにはサルノコシカケ類の種数が多いだけでなく固有種が多いことが示唆された。