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更新日:2011年5月2日

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自然探訪2011年5月 働き者の女王様 -スズメバチの創設女王-

働き者の女王様 -スズメバチの創設女王-

どんなものにでも始まりがあります。毎年、夏になると、スズメバチの巣の話題がきまってテレビや新聞紙面をにぎわすものですが、そんな大きな巣も、もとをただせば一匹の母バチに始まります。彼女たちが長い越冬を終えて巣作りを始めるのは、4月の終わりから5月の始め。日本には何種ものスズメバチがいますが、どの種も最初の巣はピンポン球か、せいぜい野球ボールくらいの大きさ、出入りするのも母バチ一匹だけなのでほとんど気づかれることはありません。
スズメバチの巣といえば、けんかっ早いたくさんの働きバチに守られた要塞(ようさい)、そしてその奥に守られて産卵に専念する女王バチが連想されるかもしれません。でも、始まったばかりの巣には働きバチはいません。最初の働きバチを育て上げるまでのあいだ、母バチはすべての仕事を自分でこなさなければならないのです。巣作り、卵の保温、餌集めのための狩り、外敵からの防衛などなど...。巣作りを始める母バチは、「創設女王」と言われますが、そのかいがいしい仕事ぶりは、「女王バチ」のイメージからはほど遠いものです。
母バチにとって最初の娘たちにあたる働きバチが羽化してくるのは、巣を作り始めてから一ヶ月以上も先。それまでの期間は、巣を守ってくれる働きバチがいないため、スズメバチの生活史の中で最も巣が失敗しやすい時期なのです。この期間を無事に過ごせるのは、創設された巣のうちの半分にも満たないでしょう。私たちが夏に目にする大きなハチの巣は、こうした危険な時期を母バチが乗り越えた証と考えれば、恐ろしげなハチの巣も、その見方が少し変わってくるかもしれません。

写真1:オオスズメバチの創設女王
写真1 巣作り前に樹液で英気を養うオオスズメバチの創設女王(森林総研構内)

写真2:キイロスズメバチの創設女王
写真2 出来たばかりの巣に巻き付いて、卵を温めるキイロスズメバチの創設女王(札幌市内)

写真3:コガタスズメバチの女王
写真3 巣作りにはげむコガタスズメバチの女王(牛久市内)

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