今月の自然探訪 > 自然探訪2013年 掲載一覧 > 自然探訪2013年11月 パラグアイ・西部地方の森林
更新日:2013年11月1日
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南米の内陸国であるパラグアイ共和国は、日本から最も遠い国のひとつと言われています。日本の約1.1倍ある国土は、そのほぼ中央を南北に流れるパラグアイ川を境界に東部地方と西部地方の2つに大別することができます(図1)。今回、ここで取り扱う西部地方は、国土面積の約6割を占めますが、人口はわずか3%しか占めていません。西部地方は、アルゼンチンからボリビアに広がるグランチャコと称される乾燥地のほぼ真ん中に位置していることから、チャコ地方とも言われています。西部地方は、ボリビア国境に近い西側を乾燥チャコ(チャコ・セコ)と、パラグアイ川に近い東側を湿潤チャコ(チャコ・ウメド)にそれぞれ区分されます。これら二つのチャコに成立する森林は我々が身近に接している森林とは少し異なった様相を呈しています。
西部地方は、牧畜でも有名な場所であり、牧場と森林が混在しています。森林の木の高さは10m前後であり、日本の身近な森林と比べるとまばらに木が生えているとの印象を受けることでしょう(写真1)。乾季の、強い乾燥気候に適応した刺のある植物が多く生えているのも特徴のひとつです。また、現地でボラチョ(酔っぱらいという意味)と言われる特異な形をした木(写真2)や、サボテンも森林を構成する重要な種となっています。これらの種に加え、湿潤チャコではヤシが純林状に成立したりします(写真3)。
パラグアイでは、テレレと言われるマテ茶を飲む習慣がありますが、その日の体調によって薬効のある植物をマテ茶に加えたりしています。現地の人は、葉や木片がどのような薬効を持っているかを良く知っており、その知識の豊富さには驚くばかりです。このような人と植物の深い関わり合いは、森林保全、引いては種多様性保全の重要性を我々に教えてくれます。
![]() 図1:パラグアイの地方図 |
写真1:西部地方の代表的な樹種の一つであるケブラッチョ・ブランコ
(Aspidosperma quebracho-blanco)(ラ・パトリアにて撮影)
写真2:西部地方の代表的な樹種の一つであるボラチョ(Ceiba chodatii)
(マリスカル・エスティガリビアにて撮影)
写真3:湿潤チャコのヤシ林(Copernicia alba)
(サンタ・マリア・デル・ドセにて撮影)
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