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更新日:2022年10月3日

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自然探訪2022年10月 “教育の森林(もり)”を訪ねて

涼しい風が吹いてくると、そろそろ紅葉狩りに出かけたくなります。東京では、気軽に日帰りの登山が楽しめる場所に高尾山があります。高尾山は、国有林の豊かな自然を活かした「レクリエーションの森」のうち「自然休養林」に指定されています。「レクリエーションの森」(全国約600カ所)には、「自然休養林」の他にも、自然景観の変化が豊かで自然観察学習に適した「自然観察教育林」もあります。「自然観察教育林」は、知床や白神山地、箱根、上高地、軽井沢、霧島など、観光地として人気の場所にもあり、森林の散策を楽しみながら森林について学べます。

積極的に森林について学べる“教育の森林”として、森林総合研究所の多摩森林科学園(東京都)もあります。研究施設の一部(樹木園・サクラ保存林15ヘクタール)を公開しており、森林に親しみながら学べます。樹木園は、森林散策をしながら、樹木や自然への理解を深められる屋外展示を設けています(写真1)。また、保育園や小学校の森林学習、大学生の森林科学の授業の場などで利用されています。

多摩森林科学園では、他にも教育研究の取り組みを行っています。樹木園内は、森林保護の観点から採取・採集が禁止ですが、特別支援学校からの問い合わせから、学校と連携して木にふれる体験活動を行いました。自然に出かける機会が少ない視覚障害児たちが、安全に森林を学べるように教材を工夫しました。子ども達は、木の幹や葉にさわったことがあっても、木の全体像は分かりにくいので、伐倒した木を根元から先端までさわって、長さ(高さ)や太さを体感し、樹木模型(1/100縮尺)や稚樹で木の形を学びました(写真2 写真3)。

森林での体験を通じて、もっと積極的に森林科学について学ぶ“教育の森林”として、「演習林」があります。演習林は、森林科学など専門教育を行う学校に設けられており、大学では農学部森林科学科など27校、高等学校では、森林・林業の関連学科をもつ農業高校など70校にあります。日帰りまたは宿泊で演習林に行き、自然観察、森林のさまざまな調査、林道の測量や整備、植林、間伐や木材生産などの実習を行います(写真4)。実習では、森林に囲まれて、仲間と共に汗を流しながら、森林のしくみや保全を学びます。

他にもさまざまな“教育の森林”があります。誰でも利用できる「県民の森」などが全国に設けられていますが、森林での体験活動ができる場合もあります。演習林でも、一般から申し込める公開講座が行われていることがあります。また多摩森林科学園では、森林講座やガイドツアーを開催しており、Web上では、初春になるとサクラの開花状況を確認できる「サクラ開花ビジュアルマッピング」も公開しています。

ぜひ、さまざまな“教育の森林”を探して訪ねてみてください。

 

(多摩森林科学園 井上 真理子)

写真1 樹木園の展示「森のポスト」
写真1 樹木園の展示「森のポスト」

写真2(左) 木の大きさを感じよう 写真3(右) 稚樹と樹木模型の観察
写真2(左) 木の大きさを感じよう
写真3(右) 稚樹と樹木模型の観察

写真4 間伐体験
写真4 間伐体験

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