今月の自然探訪 > 過去の自然探訪 掲載一覧 > 自然探訪2026年7月_木材の日焼け
更新日:2026年7月1日
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夏が本番を迎えようとするこの季節、肌の日焼けが気になる方も多いでしょう。日焼けの原因となる紫外線の量は増加傾向にあり、つくば市における気象庁の観測データ(注1)によると、外出を控えるなど配慮が必要となる日の10年間の年平均日数は、1990~1999年には約34日でしたが、2016~2025年には約59日と2倍近く増加しています。
紫外線は人の肌だけでなく、様々なものに日焼けを引き起こします。木材も例外ではありません。木材は紫外線を浴びると、早くて数日で表面が変色してしまいます。色の変わり方は元々の木材の色によって異なりますが、淡色のスギ材の場合は人の肌のように色が濃くなっていきます(写真1)。とは言っても、メラニン色素の沈着による肌の濃色化とは仕組みが全く異なります。木材にはリグニンという化学成分が含まれており、紫外線をよく吸収する性質があります。この物質が紫外線を吸収して化学反応が起きた結果、着色成分が増えることで色が濃くなっていくのです。
それでは屋外に長期間置かれた木材はどうでしょうか。この場合、木材は紫外線のみならず雨の影響も受けることになります。紫外線を吸収したリグニンは、更に分解されて水に溶ける物質に変化します。そのため、晴天・雨天が繰り返されると分解されたリグニンが雨水で溶け出して、木材の表面はセルロースに富んだ状態となります。紙の原料として知られているセルロースは白色の物質なので、セルロースに富んだ木材の表面は白くなるはずです。
しかし、白くなった木材を目にしたことがある方はほとんどいないでしょう。屋外に長期間設置されている木製のベンチや外壁などは、灰色に変色している場合が多いのです(写真2、3)。この現象は、カビ類や空気中の浮遊物などの黒色物質が木材表面に付着することにより生じたもので、白色と黒色が相まって灰色を呈します。ちなみに、試験槽の中で太陽光、降雨、温湿度といった屋外環境を人工的に再現する、ウェザーメーターと呼ばれる装置に木材を入れて試験を行うと、黒色物質の影響を受けないため表面は真っ白になります(写真4)。
木材を無垢のまま屋外で使用すると、すぐに変色して美観が損なわれてしまいます。その上、太陽の紫外線や降雨によって劣化した木材は、腐朽の影響を受けやすくなります。そのため、美観を維持しながら木材を長期間屋外で使用するためには、塗装などにより保護する必要があります。しかし、塗装の効果は永続的ではなく、定期的に塗替えなければなりません。この塗替え作業を怠ってしまうと、表面だけでなく内部まで劣化が進行して、部材を交換する事態になる可能性もあります。木材も人の肌のように、美しさを維持するにはメンテナンスをしっかりと行うことが重要なのです。
注1)気象庁 紫外線の経年変化
https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/diag_cie.html
(木材改質研究領域 神林 徹)

写真1.人工太陽光の照射によるスギ材の変色。矢印は、照射時間の経過を示す。

写真2.屋外に設置された木製ベンチ(森林総研構内)

写真3.木製の外壁(森林総研構内)

写真4.ウェザーメーターで人工的に劣化させた木材
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