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更新日:2026年8月1日

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自然探訪2026年8月 小笠原の進化の証人、絶滅危惧種ウラジロコムラサキ

小笠原諸島は、東洋のガラパゴスとも呼ばれ、大陸と一度も陸続きになったことがない海洋島です。独自の進化を遂げた固有の動植物が数多く暮らしています。そのうち、小笠原諸島のムラサキシキブ属は、現在5種1交雑種が知られており、その一部は昨年2025年に新たに記載されたばかりです。

これらはもともと一つの祖先から分かれてきたと考えられています。そしていずれの種も、オスとメスの株が分かれる雌雄異株という特徴を持っています。小笠原諸島以外のムラサキシキブ属は、1つの株に両性の花をつける雌雄同株であることから、小笠原のグループで見られるこの特徴は特異的であり、島で独自の進化が進んできたことを示す、生物学的にも重要な存在です。

今回ご紹介するのは、ムラサキシキブ属の絶滅危惧種ウラジロコムラサキです(写真1、2)。本種は種の保存法に基づく国内希少野生動植物種にも指定されています。ウラジロコムラサキは、父島と兄島の2島にのみ自生しています。ところが、戦後に野生化したヤギ(ノヤギ、写真3)の食害により、一時は絶滅寸前まで個体数が減少しました。ノヤギが駆除された兄島では100個体以上に回復した一方で、父島では厳しい状況が続いています。父島では、2024年の時点で自生地と植栽地を合わせても成木はわずか15個体であり、そのうちメスは3個体しかいないことが明らかになりました。

このような状況では、自然条件下での繁殖は極めて困難であり、人工交配が必要です。しかし、現存する父島の個体をすべて用いた場合でも、次世代の遺伝的多様性は現在の水準に届かないことがわかりました。つまり、父島の個体だけでは、将来にわたって集団を維持していくことが難しい状況にあると考えられます。一方で、兄島の個体を取り入れることで、より多様な遺伝的背景を持つ次世代が得られる可能性が示されています。今後は、ウラジロコムラサキの存続に向けて、遺伝情報に基づいた保全の取り組みが重要になると考えられます。

(樹木分子遺伝研究領域 鈴木 節子)

写真1乾燥した岩場に生えているウラジロコムラサキ。濃いピンク色の小さい花が開花し、葉は厚く表面に細かい毛が密生している。
写真1.乾燥した岩場に生育し、花を咲かせるウラジロコムラサキ。
 

写真2ネットの中でノヤギから保護されるウラジロコムラサキの個体。
写真2.ネットに囲われ、ノヤギの食害から保護されているウラジロコムラサキ。
 

写真3崖下の草地で草を食べる3頭のノヤギ。小笠原では植生への影響が大きい外来種。
写真3.崖下の草地で採食するノヤギ。小笠原では植生への影響が大きい外来種。

 

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