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令和6年11月1日、森林研究・整備機構創立119周年式典において、以下のとおり理事長表彰を行いました。
業績名 |
人類の気候変動適応解明に対する花粉分析研究の貢献 |
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受賞者 |
志知 幸治(四国支所 森林生態系変動研究グループ 主任研究員) |
受賞要旨 |
過去の気候変動が人類に及ぼした影響を明らかにすることは、今後の気候変動に対する適応策を検討する上で重要な手がかりとなる。受賞者は、氷河期である約4.5 万年前にシベリアのバイカル地域でなぜ人類の拡散が起きたか、バイカル湖湖底堆積物の花粉分析に基づき検討した。その結果、約 4.5~4.0万年前に比較的温暖な時期が続いたこと、地軸の傾きの極大化が森林ステップ植生の拡大を促したこと、それらが狩猟対象となる動物の分布拡大を促し、人類の拡散と定着を可能にしたことを突き止めた。この成果は、気候変動に対する人類の適応を示す具体的で重要な知見を示した点で評価され、花粉分析の価値を高めた点、考古学・人類学研究に新たな比較手法を提案した点で学術的に貢献した。 |
業績名 | 外来カミキリムシの防除法開発および普及啓発 |
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受賞者 |
外来害虫研究グループ 加賀谷 悦子(森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室長) 砂村 栄力(企画部 研究企画科 研究企画官) 田村 繁明(森林昆虫研究領域 主任研究員) |
受賞要旨 |
外来種のカミキリムシが、日本で多種の広葉樹を加害している。受賞者らは侵入の報を受け、現地調査を進めると同時に防除手法の開発および既存情報の取りまとめを、交プロ1(平成29〜30年度)、生研支援センター イノベーション創出強化事業(平成30〜令和3年度)(令和4~7年度)、林野庁「ツヤハダゴマダラカミキリによる被害や防除方法等に関する調査事業(令和4年度)」等で進めてきた。候補者4名は、上記のプロジェクトを主導し、クビアカツヤカミキリについては総合的な防除手法を考案し、ツヤハダゴマダラカミキリには世界的な先行事例を取りまとめ行政に提示した。また、その成果を防除マニュアルや普及リーフレットにまとめて配布し、多くの被害現場でそれらが活用されている。 |
業績名 |
木材生産と公益的機能の両立を目指した保持林業の実証実験 |
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受賞者 |
保持林業実証実験グループ 尾﨑 研一(北海道支所 森林生物研究グループ 研究専門員) 佐藤 重穂(企画部 広報普及科長) 山中 聡(北海道支所 森林生物研究グループ 主任研究員) |
受賞要旨 |
保持林業は、効率的な木材生産と公益的機能の両立を目指し、主伐時に一定量の樹を切り残す森林管理手法である。本業績では、北海道有林のトドマツ人工林において、日本で初めて保持林業の実証実験を開始し、50年の長期及び大規模実験のフレームワークを構築した。実験開始10年後、生物多様性保全、木材生産性、水土保全の各機能を比較した結果、目的とする機能によって伐り残す量(保持量)の影響が異なった。各機能への影響を統合した保持林業の適切な施業法を提案したことは、実用化に向けた優れた成果といえる。初期の成果を取りまとめ、多数の論文を国際誌で発表し、また一般向けにも広く普及した。 |
業績名 | 侵略的外来種問題の国際的取り組みの活動に対する科学的貢献 |
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受賞者 |
小山 明日香(生物多様性・気候変動研究拠点 主任研究員) |
受賞要旨 | 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学—政策プラットフォーム(IPBES)は、生物多様性保全と持続可能な利用を通した人類の福利、持続可能な発展を目的とし、科学と政策のつながりを強化する政府間組織である。受賞者は、世界49ヵ国・86名の専門家が参加し4年以上をかけて作成した、IPBESによる「侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価」報告書(2023年公表)に主執筆者のひとりとして参加し、報告書の科学的根拠の提示に貢献した。特に、「外来種の侵入に影響を及ぼす要因」に関する執筆をリードするとともに、研究所の国際的な知名度向上にも大きく貢献した。 |
業績名 | エリートツリー特性表 九州育種基本区・スギの作成と公表 |
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受賞者 |
九州エリートツリー特性表作成グループ 久保田 正裕(林木育種センター 九州育種場 育種課 主任研究員) 倉原 雄二(林木育種センター 九州育種場 育種課 主任研究員) 岩泉 正和(林木育種センター 関西育種場 育種課 育種研究室長) |
受賞要旨 |
現在でも九州で好んで植栽される「挿し木在来品種」には、同名異クローン、複合クローン品種等が多く含まれることが明らかにされている。クローン林業の優位性を高度に発揮するためには、単一クローン品種群から、造林目的や目標とする木材品質等に応じて品種を選択して植栽することが前提となる。 |
業績名 | 森林保険事務の効率化等によるサービス向上への貢献 |
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受賞者 |
森林保険センター 保険業務部 保険業務課 |
受賞要旨 |
森林保険における損害発生通知書の提出時に法人の代表者が変更していた場合、従前は事前の代表者名の変更手続きを必須としていたが、これを必須としないこととするとともに、保険金請求時等に必須としていた森林保険証書の添付について、一部を除き廃止するなど、手続きの見直しを行った。 |
業績名 | 世界初となる「木の酒」の製造技術の確立と実証化に向けた取り組み |
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受賞者 |
木の酒研究グループ 大塚 祐一郎(森林資源化学研究領域 主任研究員) 楠本 倫久(森林資源化学研究領域 主任研究員) 松原 恵理(複合材料研究領域 主任研究員) 森川 卓哉(森林資源化学研究領域 主任研究員) 山下 直子(関西支所 森林生態研究グループ長) |
受賞要旨 |
世界初の木そのものを直接糖化発酵して造る「木の酒」の製造技術を開発した。樹種ごとに異なる風味の「木の酒」が製造できることを化学分析およびアンケート調査により明らかにした。また新設されたバイオマス変換新技術研究棟の実証製造施設で安定製造プロセスを確立し、連続生産運転にも成功した。滋賀県東近江市をモデル山村地域として「木の酒」を安定的に製造するために必要な木材量や賦存量を明らかにした。社会実装を促進するために、安全性試験で問題となるデータがないことを確認した上で、これらの成果を公式ホームページ等で積極的にPR活動し、複数企業との特許実施許諾契約の締結につなげた。また実証実験施設を活用した製造技術移転研修を実施し、民間企業2社の製造場設置計画につなげることができた。 |
業績名 | 大規模山火事跡地の復旧再生に向けたブロックディフェンスによる防護柵の設置効果と最適な残置幅について検討 |
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受賞者 |
小川 大知(森林整備センター 森林業務部 森林企画課 企画係主任) |
受賞要旨 |
平成29年5月に岩手県釜石市尾崎半島にて山林約413haを焼損する大規模な山林火災が発生した。森林整備センターでは地元関係機関等と連携して令和3年度から水源林造成事業による森林復旧に取り組み、令和5年度までに23.19haの植栽を完了した。 |
業績名 |
水源林造成事業における主伐販売業務の増加への対応の検討、対処策の提示 |
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受賞者 |
森林整備センター 造林木販売検討グループ |
受賞要旨 |
水源林造成事業では、造成した森林の半数が主伐収穫期を迎え、森林を整備する業務に加え、増加する主伐販売業務を限られた職員で適切に行う必要が生じている。この課題に対応するため、令和4年度に造林木販売検討グループが整備センター(川崎)に設置された。 |
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