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更新日:2025年11月14日

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令和7年度理事長賞

令和7年11月4日、森林研究・整備機構創立120周年式典において、以下のとおり理事長表彰を行いました。

業績名

大規模林野火災への対応に向けた行政やマスコミ等への科学的知見の不断の提供を通じた理解促進による社会貢献

受賞者

林野火災研究グループ

玉井 幸治(森林防災研究領域 気象害・防災林研究室主任研究員)
吉藤奈津子(森林防災研究領域 気象研究室主任研究員)

受賞要旨

令和7年2月~3月に岩手県大船渡市を初め岡山県や愛媛県等、各地で大規模な林野火災が発生し社会的に高い注目を集めた。日本では近年大規模な林野火災が少なかった中で受賞者らは林野火災の専門家として、玉井氏は林床水分状態、吉藤氏は林床可燃物の視点から林野火災リスクの研究を進めておりマスコミ等の取材が集中したが、これによく対応し取材件数は約1.5ヶ月の間で合わせて35件にも及んだ。また林野庁や消防庁と連携して林野火災への行政の対策検討に協力した。この様に、林野火災が社会的に注目される中で、林野火災に関する科学的な知見を社会へ広く還元することで社会貢献が大きく、森林機構のプレゼンスを高めた。

業績名 食塩水によるメスジカ誘引手法の開発と普及
受賞者

メスジカ誘引技術開発チーム

鈴木 圭(九州支所森林動物研究グループ主任研究員
森 大喜(九州支所森林生態系研究グループ主任研究員)
山川博美(九州支所森林生態系研究グループ主任研究員)

受賞要旨

過剰に増加したニホンジカによる林業被害は全国的な問題であり、効率的に個体数を減らすことが求められている。本業績では、個体群動態に強く関連するメスを捕獲することで、個体数を効率的に減らせることを明らかにするとともに、メスを特異的に捕獲することを目的とした簡易的なメスの誘引手法の開発に取り組んだ。まず、メスで不足しやすいミネラル成分がナトリウムであることを特定した。次に、食塩水を林内に設置することで、食塩水が春から初夏にメスを選択的に誘引できることを明らかにした。以上の成果は、多数の国際誌に論文として発表され、広く啓発したことで、本手法を用いた捕獲が林野庁や地方自治体によって実施され始めている。

業績名

奄美大島における外来種フイリマングース根絶成功への貢献

受賞者

亘 悠哉(野生動物研究領域 主任研究員)

受賞要旨

2024年9月3日、環境省より、奄美大島における外来種マングースの根絶宣言がなされた。これは大面積(712km2)の島における根絶達成という世界的な偉業となるとともに、アマミノクロウサギなどの在来種の絶滅を回避し顕著な回復をもたらしたネイチャーポジティブの明確な成功例となった。森林総合研究所は、1990年代からの元職員の山田文雄氏や杉村乾氏によるアマミノクロウサギ研究を通して、マングース問題を警鐘し、マングース対策の実現に貢献してきた。そして、受賞者は2002年から23年にわたり、マングースの生態インパクト研究や普及啓発活動、事業の検討委員として、一貫して事業に寄り添い、当事業の推進と継続に多大な貢献を果たした。森林総合研究所、歴代の奄美研究職員、そして受賞者は、マングース根絶というまさに歴史的偉業の功労者の一員である。

業績名 スギの気候変動適応に向けた耐乾性品種の開発
受賞者

スギ耐乾性評価チーム

能勢 美峰(林木育種センター育種部 育種第一課 主任研究員)
高島 有哉(林木育種センター関西育種場 育種課 主任研究員)
松下 通也(林木育種センター育種部 育種第二課 主任研究員)
永野聡一郎(林木育種センター育種部 育種第一課 主任研究員)

受賞要旨 気候変動により、気温の上昇に加えて無降水日数が増加し、植栽直後のスギの苗木が干害によって枯れるリスクが高まっています。我々は、乾燥に強いスギ系統の選抜を目的として、2016年から研究を進めてきました。はじめに、スギの耐乾性の評価のための手法の開発を行い、2023年に品種開発実施要領としてとりまとめました。この要領に基づき、全国の第1世代精英樹100系統以上の試験を行い、2024年に「気候変動適応性に優れる品種(耐乾性)」として高い耐乾性を示す4系統を開発しました。本成果を発展させることにより、気候変動下においても持続可能な森づくりの実現が期待できます。
業績名 森林保険部門と研究開発部門との相互連携による森林気象害リスク評価に関する研究の発展及び公開シンポジウムの開催
受賞者

森林保険センター 保険総務部 保険企画課
森林保険センター 保険業務部 保険業務課
森林総合研究所植物生態研究領域
森林総合研究所森林防災研究領域
森林総合研究所森林災害・被害研究拠点

受賞要旨

森林保険センターと森林総合研究所は、2015年度より、森林保険業務で得られた被害データを活用し、「森林災害のリスク評価手法」及び「損害調査の省力化」のテーマで研究とその成果の活用を行っている。「森林災害のリスク評価手法」については、2015~2019年の第一期では風害、雪害、火災のリスク評価、2020~2024年の第二期では、保険金支払件数の多い干害のリスク評価を行い、より適切な森林所有者による保険加入に貢献した。
「損害調査の省力化」については、UAVを活用した損害調査マニュアルを作成し、第一期では水害及び火災、第二期では風害及び雪害の損害調査にUAVを活用するとともに、簡易なデジタルデバイスによる測量も可能とし、損害調査の省力化・迅速化を進め、お客様への保険金の早期お支払いに寄与した。

業績名 「情報セキュリティの向上と業務効率化を両立するクラウド型情報システム基盤の構築」
受賞者

森林整備センター 情報システム基盤構築チーム

笹嶋 勝(森林管理部企画管理課課長補佐)
髙倉利仁(森林管理部資金会計課債権管理第一係長)
瀧下 潤(九州整備局総務課経理係主任)
朝倉大志(森林管理部企画管理課情報技術管理係長)

受賞要旨

森林整備センターにおいて運用していた情報システム基盤は、多数の契約により構成され、各契約間に跨がる調整に多大な労力を要する状態にあった。各契約が順次満了を迎えるに当たり、政府の「クラウド・バイ・デフォルト」原則や政府統一基準への準拠を基本とした情報セキュリティ水準を確保した新しい「情報システム基盤」の構築が必要となっていた。
受賞者らは目的達成のため、長期プランの立案を始め、専門のコンサルティング業者と契約し、構築業務における仕様検討、課題解決等に取り組み、セキュリティを飛躍的に向上させるとともに、業務効率化の面においては、モバイル端末の導入により、リモートワーク等効率的かつ利便性の高い環境整備の実現に大きく貢献した。

業績名 「水源林造成事業地における保持林業の取組(事例報告)」
受賞者

中国四国整備局保持林業チーム

山台 英太郎(中国四国整備局水源林業務課施業計画係主任)
佐々木 紀之(森林業務部資源利用課長)

受賞要旨

保持林業は、生物多様性の保全や生態系の回復のために、森林を伐採する際に高木性広葉樹等の一部を残す森林施業であり、欧米や北海道で取り組まれている。
森林整備センター中国四国整備局では、従来からの針広混交林等の造成に加え、さらなる生物多様性の向上を目指し、森林総合研究所との連携のもと保持林業の取組を開始した。
これまでに管内4県の事業地で実施し、岡山県の事業地において、保持木の調査や作業者の意見の聞き取りを行い、日本森林学会大会において事例報告した。
この取組を踏まえ、森林整備センターでは、今後、全国の事業地において生物多様性の保全や生態系の回復に資する保持林業を展開していくこととしている。

業績名 生物多様性・水・食料・健康・気候変動の間のネクサス(相互関係)に関する国際理解への科学的貢献
受賞者

エストケ・ロナルド・カネーロ(生物多様性・気候変動研究拠点)

受賞要旨

近年、生物多様性-水-食料-健康-気候変動などこれまで個別に対応してきた地球規模課題間の相互関係に着目し、統合的な課題解決に取り組む手法(ネクサス・アプローチ)が注目されている。受賞者は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学—政策プラットフォーム(IPBES)のチームにおいて、57の国から選ばれた165名の専門家のうち、わずか13名で構成されるレビューエディタ(RE)の一人であり、2024年に政策決定者向け要約(SPM)が公表されたネクサスアセスメントの報告に大きく貢献した。報告書では生態系の効果的な保全や回復および気候変動の緩和策、適応策の強化などが複数の地球規模課題に対してポジティブな影響を与えることを示した。

令和7年度(2025年)理事長表彰受賞者
令和7年度(2025年)理事長賞 受賞者

 

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