森林の生き物 Q10
- Q10 : 日本各地でナラの樹が大量に枯死していますが、原因はなんですか?
- A10 : 集団でナラ類が枯死するのであれば、ブナ科樹木萎凋病菌という病原菌が原因です。この菌が樹体に侵入すると、通水阻害によって樹は枯死します。おもにコナラやミズナラが枯損被害に遭いますが、地方によってはマテバシイ、アカガシ、ウバメガシなどの常緑樹が加害されることもあります。この菌はナラ菌と通称されますが、カシノナガキクイムシという昆虫によって樹から樹へと運ばれます。この昆虫は生きた樹の内部に深い穴を掘って夫婦と子供からなる家族生活を行いますが、掘った孔の壁面からナラ菌に感染すると考えられています。カシノナガキクイムシは集合フェロモンを放出して仲間を呼び寄せるため、一本の木に非常に多数の坑道があき、大量の菌が導入されると考えられます。現在の所、枯損を根本的に防ぐ方法はありませんが、枯損木はできるだけ早めに処理して、新成虫の脱出を極力阻止することが推奨されます。また現在、集合フェロモンを利用して、成虫を効率的に捕殺する研究も始まっています。
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(森林昆虫研究領域)

左:カシノナガキクイムシの♀成虫、右:材内に掘られた坑道