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更新日:2010年5月14日

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森林の生き物 Q13

  • Q13 : 日本における外来種問題として、影響や現在の対策事例をおしえてください。
  • A13 : 外来種(alien species)とは、過去あるいは現在の自然分布域外に意図的もしくは非意図的に人間によって導入された生物をさします。例えば、わが国においてすでに定着した外来哺乳類として、外国産39種(マングース、アライグマ、タイワンザルなど)、国内産6種(キタキツネ、イタチなど)が確認され、さらに侵入情報として他に外国産7種があります。わが国に住む哺乳類の種数の30%近くが外国産外来種で占められていることになります。外来哺乳類による在来生態系に及ぼす影響として、在来種を餌とする捕食の影響、在来種と交雑し純系集団を失わせる遺伝子汚染の影響、草食動物で認められる植物食害とその後の土壌浸食の影響、病気の伝播、農林業被害などが起きています。このような影響のうち、人畜への影響被害に対しては「家畜伝染病予防法、感染症予防法、狂犬病予防法、動物愛護管理法など」、また農林業被害に対しては「鳥獣の保護および狩猟の適正化に関する法律」により対策がとられてきました。一方、生態系に対する影響や被害を起こす外来種対策として「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が2004年に新たに制定され、2005年から施行されました。被害を及ぼす侵略的外来種(invasive alien species)のうち、対策を講じる特定外来種として哺乳類では11種(マングース、アライグマ、サル、リス、ヌートリア、有袋類、シカ)が当初指定され、輸入禁止、飼育許可制、防除などの規制対象となります。これらの種は上位捕食者か草食獣などで、海外においても生態系に甚大な影響を与えてきたために、多くは最悪の外来哺乳類に指定されています。
    我が国の外来種対策を考える上で、予備調査も含めて外来種駆除事業として9年間にわたり実施されてきたマングースを取上げ、その影響と対策および諸課題について検討することは重要です。奄美大島や沖縄島におけるマングースの影響の実態が明らかになればなるほど、事態の深刻さが次第に認識されています。希少種の分布縮小や絶滅の危機、捕食による在来種への直接的また間接的影響、マングースの低密度化に伴う繁殖力増加などが起きています。わが国の一部の島嶼で起きている問題ではありますが、これらの地域は生物多様性保全の観点から見ると世界的にも特異な生態系と固有種で形成されているため、保護対策の必要な極めて重要な地域です。しかし、実際の対策や技術、予算、世論の支持などは決して十分ではないのが現状です。マングースで実施されている対策や諸問題は、今後の本土や他の地域で実施される外来生物対策の一つのモデルになると考えられます。特定外来生物法の制定を期に、生態系保護のための外来種対策やその研究の必要性を再認識するとともに、一層の対策や管理が求められます。なお、さらに詳細について情報が欲しい方は、 環境省の外来種ホームページhttp://www.env.go.jp/nature/intro/(外部サイトへリンク)や、地人書館から出版された「外来種ハンドブック」(2002年)http://www.chijinshokan.co.jp/Books/ISBN4-8052-0706-X.htm(外部サイトへリンク)を参照されるといいでしょう。
  • (野生動物研究領域)

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